日本銀行(日銀)は3月31日、3月危機を乗り切るため、当座預金残高を過去最高の約27兆6000億円まで積み上げた。当座預金残高とは、銀行が決済などに備えて日銀に預けている無利子の預金のこと。銀行の手持ちの資金を潤沢にしてやれば、経済の血液でもある金が円滑に世の中に流れ始めるはずだ―との思惑からだ。このため日銀は、この当座預金の残高を、現在の金融緩和を浸透させる目標として採用している。現在、日銀が目標にしている当座預金残高は10?15兆円程度。実はこれでも通常に比べると非常に大きい額である。しかし、3月末にはその2?3倍まで積み上げられた。3月危機は起こさないという並々ならぬ日銀の決意ではあるが、同時に日本発の金融危機が起きかねないという不安の証でもある。
●過去最高レベルの積み上げ額となった日銀口座預金
日銀の不安の先は、“世界最大の金融機関”みずほグループ<8305>に向けられていた。みずほグループは4月1日に統合の第2フェーズを迎え、傘下3行が2つの新銀行に再編されてスタートを切った。日本経済にとっては、まさしく一つの節目と見ることも出来た。しかし、国際金融の世界、それも国際通貨基金(IMF)などからは70兆円を超える資産規模を持つ屈指の「みずほコーポレート銀行」の経営を危ぶむ囁きが漏れていた。大企業と取引を行い、海外業務を一手にこなす、それに金融債も発行できる。大手銀行としては申し分ない要素を備えている同行。ところがその資金繰りには大きな不安を抱えていた。
金融債を発行できるとは言え、莫大な資金をすべて手当てできるはずも無く、金利や手数料でもどれほどの利益を上げることができるのか―。また、資金繰りが不安定な中で海外業務を担うということは、外為取引などにも大きな影響を及ぼしかねない裏側がある。IMFが、先に柳沢金融担当相に対して特別検査の受け入れを強く求めたのは、実はみずほコーポレート銀行、ひいてはみずほグループの経営実態を自らの目で確かめる必要があると考えたため、と伝えられている。日銀の不安はこれと同じだ。みずほコーポレート銀行の資金繰りに支障をきたさないよう、その裏付けとして日銀当座預金を過去最高のレベルまで積み上げたのだ。つまり「いつでも、ここから金を引き出せ」と。
●そして「みずほオンライン障害」が起こった
「みずほグループ」は4月1日を何とか迎える事ができた。しかし、その後は、前代未聞の状態に陥っている。オンラインのトラブルだけではなく、まったくの見込み違いから人為的なミスを招き、金融機関の生命線と言える決済機能が一部とは言えマヒしてしまった。
その影響は計り知れず、社会問題化するに至っている。大手企業社長に「大手銀行の看板が泣くというか、信用組合以下の機能しか持ち合わせていない」とまで言わせる実態を露呈してしまった。こうした失態がもし外為取引などで起きたら・・・それはみずほグループの現在の状況からすれば、「あり得ない」とはまったく言い切れないであろう。むしろ、「起きる可能性が高いのではないか」と言う人もいるほどだ。
海外が怯える「みずほ」のリスク。日本の金融の脆弱さを露呈した今回の“社会問題”を、日本の当局はどう乗りきって行こうとしているのか。日銀の当座預金残高から垣間見えるものは「何が起きても不思議ではない」今後の日本経済―それだけは確かなようだ。
(東山 恵)
・「金融再生最前線」?大再編に大暗雲・・・みずほのATM障害
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/03/20020403103510_21.shtml
・露呈した金融界の“盲点”?みずほ障害が示すシステム軽視のツケ
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/09/20020409103016_01.shtml
・みずほ銀トラブルに影の“主役”?最強IT3社の大失態
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/09/20020409142005_23.shtml
・「金融再生最前線」?G7で財務相が“危機回避”宣言する?!
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/08/20020408155505_07.shtml