「金融庁としては、すでに経営破綻が確定した石川銀行と中部銀行を『日本継承銀行』に引き継がせる方針を固めた、と言っていいだろう」
金融庁幹部がこう言ってみせる。
この聞き慣れない「日本継承銀行」とは、預金保険機構が100%出資を行い、同機構の子会社として設立される“ブリッジバンク”のことを指す。この日本継承銀行の役割は、破綻金融機関の一時的な“受け皿”となることに他ならない。
今年4月1日のペイオフ解禁前に破綻した金融機関の預金については、その全額が保護されることになっている。ただし、預金の全額保護を図ることを目的に預金保険機構から資金援助を受ける場合、その請求は“受け皿”となる金融機関に限定される。
そして、たとえペイオフ解禁前に破綻した場合でも今年3月31日までに“受け皿”となる金融機関が確定しない場合には、預金の全額保護を保証する法律−預金保険法(附則)−がその段階で失効してしまうため、資金援助が受けられなくなる恐れがあるのです。その結果、実質的に預金の全額保護が不可能な状況になってしまう可能性があるのです」(金融庁幹部)
そこで、この日本承継銀行が一時的に“受け皿”となり、資金援助を受け入れるという手法がとられるのである。
「かといって、日本承継銀行の役割はそればかりではありません。むしろ金融庁としては4月1日以降に金融機関が破綻した場合に、積極的にこのブリッジバンクを“受け皿”に利用するつもりなのです」(金融庁幹部)
実を言うと金融庁によれば、この4月1日以降も経営破綻に陥りかねない銀行−地域銀行−がいくつかある、というのだ。
「とりあえず金融庁が要警戒体制を敷いているのが、東北地方に本店を置く地域銀行2行と、関東地方に本店を置く地銀1行です。自己資本比率低下が危険視される東北地方の2行については、現在資本増強策を進めている最中ですが、まだまだ計画は実現していません。今後の事態の推移を見守る必要があるでしょう。問題なのは、関東地区に本店を置く地銀です。この地銀についてはこれまでまったくノーマークでしたが、ここへきて巨額の不良債権の存在が発覚してしまったのです。その影響が今後どのような形で出てくるのか…。まさに予断を許さない状況です」(金融庁関係者)
つまり、ペイオフ解禁後も、経営破綻に追い込まれる金融機関が出てくる可能性が高くなってきた、とみていいだろう。
しかしだからといって、今年4月1日以降も預金が全額保護されるわけではない。
「たとえ“資産超過”にあった銀行でも“経営破綻”したとたんに“債務超過”に陥ってしまうケースがほとんどだ。そうした場合には、預金の全額保護は不可能になる」(大手都銀役員)
預金者は、このコメントに耳を傾けるべきだろう。
2002/3/12