昨年秋口から、過重債務企業の名前を掲載した問題企業30社リストが政界、経済界、官界を揺るがしたのは記憶に新しいところ。だが年明けに演じられた官民上げてのダイエー<8263>救済劇以降、同リストが示した危機感とは裏腹に、問題はまたも先送りされようとしている。
3月5日のPAXNetニュース「金融再生最前線」でも詳報されている「潰れない企業リスト」が出回り、問題策送りが日増しに現実味を帯びていると市場関係者の話題を集めているのだ。同リストに掲載された企業をみると、いずれも金融支援などを通じて一息ついていることが明白だからだ。
●11社の大企業
このリストに掲載されているのは、ダイエーを含めた過剰債務企業11社だ。ダイエーのほかには、住宅・不動産・ゼネコンが7社、ノンバンク2社、商社1社が名を連ねている。
同リストは、1月下旬から2月初旬にかけて金融機関関係者がまとめたとの説が有力。また野党幹部が金融システムの実態に関する説明を金融庁に求めた際、同庁が差し出した説明資料だとの憶測さえある。一部夕刊紙などで報じられたことをご記憶の向きも少なくないはず。
このうち、ほとんどの企業で、いずれも同業同士の経営統合が決まったほか、債権放棄やデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)を通じた金融支援が決定、あるいはその可能性がさかんに報じられている。
●いつでも発表可能な“特別検査”
同リストが関係者の間に広まっていた時期、金融界でこんなため息交じりの声が漏れていた。デフレ対策の策定に先立ち、小泉純一郎首相が問題企業を洗い出す特別検査を一層厳格化するよう指示していたが、「特別検査の結果はいつでも発表が可能」(大手行幹部)だったと言うのだ。
つまり、昨年秋の厳しい検査は、ダイエーの救済策とりまとめを境になりを潜め、「3月後半に予定されている最終ラウンドを待つまでもなく、淘汰する企業、問題を先送りする企業は既に決まっていた」(同)というのだ。複数の関係者の話をまとめると、大まかな線引きは、「債務、有利子負債の規模が巨大過ぎるかどうか」だという。
●佐藤工業はリスト漏れ
3月3日に会社更生法の適用を申請、事実上経営破たんした佐藤工業<1804>はこのリストに含まれていない。同社の負債総額は約5000億円であり、少な過ぎたのである。
一部棚上げになっている企業を含め、年度内に何らかの金融支援が決まったとすれば、「潰れない企業リスト」の指摘は100%的中することになる。完全的中した場合は、「問題先送りが決定した」として株式市場関係者の失望感は更に強まることにもなる。
(相場 英雄)