株式投資は、経済学より心理学の問題であるといわれる。マーケットでは、不特定多数の投資家の打算や企みが直接、赤裸々にぶつかり合い、迷いや不安などが重なり合うのだから、人間心理の起伏、強弱が市況に色濃く反映されるのは当然だろう。とくに暴落や暴騰の相場激変時はこの傾向が強まる。それだけに相場の方向性は、逆にこの投資家心理から読み解くと分かりやすくなる。
今回の株価急反発はまさにこれに当たる。日経平均株価は、2月6日のバブル崩壊後の最安値から1カ月で2500円、なかでも空売り規制強化が打ち出された2月27日からは出来高を伴い1700円もの急反発となったからだ。この急反発相場に乗り遅れずに追随するのか、次のチャンスを慎重に待つのかは非常に判断が難しい。判断の手掛かりは、ファンダメンタルズ(基礎的条件)分析、需給分析、チャート分析など数多いが、投資家心理からのアプローチもそれに劣らず有効のはずだ。隣の投資家の顔色を最大限の洞察力をもってウオッチすれば、方向は自ずと明らかになる。
●クルマも投資家もギアチェンジには時間
今回の株価急反発は、日本売りから日本買い、株価、為替、債券のトリプル安からトリプル高、超悲観から超楽観への大激変となっているだけに、市場参加者を慌てさせ焦りさえも呼んでいるのである。当初は、空売り規制強化による売り方の買い戻しと公的資金の下支えとタカをくくっていたのが、3月に入り外国人投資家や機関投資家筋の実需が追随してきたために、この傾向に拍車をかけた。
しかし自らのリスクと相場観で相場に立ち向かっている個人投資家にとって、市場参加者の90%が弱気の相場から同じく90%が強気となった相場への急な追随は至難の技である。クルマさえブレーキをかければ止まりはするが、ギアチェンジには時間がかかる。そう割り切れればベストなのだが投資家心理としては、自らの乗り遅れを正当化し、ついには相場自体が間違っていると決め付けようとさえしがち。その誤りを犯さないためには、性急に結論を求めないことが肝心である。
ただこうした投資家心理は、相場全般にとっては好ましいことでもある。市場参加者全員が強気や弱気に固まった時こそ、相場は天底の最終転換水域に入ったことになる。逆に慎重論者が残っているうちは相場は永続きするもの。だから急がず焦らなければ冷静な相場観測と適切な投資行為も容易になる。
●「4月・5月危機説」はまだ健在
となると次の問題は、相場パターンが戻り売りから押し目買いへ、需給相場から業績相場へ完全に転換したが、その場合、有望セクターと妙味株はどれかとなる。これは、逃げを事前に打つようだが、今後の景気指標やこれから発表される企業業績、さらにはファンド筋中心の実需動向に左右されるだけに軽々には見通し難い。また、期末株高要因一巡後の4月・5月危機説も注意を要する。しかし、少なくとも投資家心理の逆を行って好材料が出た時は売り、悪材料が飛び出した時は買いとすればそう大きくは間違わないはずである。
(相馬 太郎)