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足元での“トリプル高”に歩調を合わせる形で、クレジットデリバティブ市場における、日本ソブリンのデフォルトスワップのプレミアム（保険料率）が小幅とは言え、縮小に転じてきている。一時は、異常値を通り越し、もはやソブリンとしては、ポーランド共和国クラスに相当する水準まで跳ね上がったプレミアムが、ここに来て小幅縮小した背景として、株高を背景とする“日本売り”シナリオの後退をあげる声が多い。ムーディーズによる日本国債の格下げも、最悪２ノッチまで織り込んだとされるなか、同プレミアムはピークを打った、との見方も一部で示されている。市場では、流れを変えた大きなきっかけとされた株価動向と合わせ、どこまで日本ソブリンのプレミアムの推移に関心が集まっている。
このところの市場では、株高・円高・債券高と“トリプル高”状態が鮮明になってきている。株高については、株のカラ売り規制の強化が大きな要因で、実態を伴ったものではない、との見方が圧倒的に多いが、さまざまなところで、一時期みられた“日本売り”の動きに変化の兆候が観測され始めている。
その代表格が、クレジットデリバティブ市場における、日本ソブリンのデフォルトスワップのプレミアムだという。
同プレミアムは、海外勢の“日本”に対するシビアな見方をストレートに反映しやすいとされるなか、昨年末から徐々に拡大傾向を強めていた。今年２月に入り、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、「日本政府の発行する円建て国内債券の格付けＡａ３を引き下げ方向で見直す」と発表、急上昇する展開になっていた。
市場筋によると、異常値とされる５０ｂｐ（１０年物・ドル建て）を大きく上回り、一時はオファーサイドで６０ｂｐを越える場面もあった。
しかし、足元での株価上昇と歩調を合わせた格好で、同スプレッド拡大の動きが止まり、６日現在、１０年でオファーサイドは５５ｂｐ付近まで縮小、直近では５４ｂｐ付近で出合いが観測された、という。
６日の市場では、ムーディーズが、現在行っている日本の格付け見直しについて、２段階の引き下げとなるリスクが“高い”、との認識を繰り返し表明したが、債券市場でも小幅な反応にとどまったように、クレジットデリバティブ市場でも、特段ネガティブな反応はみられなかった。
ティーアイユーデリバティブズ・営業企画室室長の根谷昌宏氏は、「すでに悪いニュースにも反応しなくなってきている。今では、ひところとは逆に、“日本買い”的な動きになっているが、日本ソブリンのデフォルトスワップのプレミアムも、若干縮小してきている」と述べている。
また、アール・ピー・テックの信用リスク市場担当ディレクターの河合祐子氏は、かねてから、同プレミアムを“既に異常値”と表現していたが、「マーケットが、“日本売り”的なネタに飽きてきたようだ。日本国債の格下げ自体は、まだ現実のものとはなっていないが、ムーディーズの見通し発表を受けて不透明感はなくなったといえるだろう。ディーラー心理としては、利食いのタイミングとみてもおかしくない」という。
河合氏は、「カラ売り規制の強化など、きっかけとしては不自然ではあるものの、事実として株価の上昇があるわけで、株の上昇を受けて、“日本売り”のポジションをアンワインドするような動きになっているようだ」と述べたうえで、同プレミアムには打ち止め感が出てきている、と指摘する。
今後の日本ソブリンのプレミアム動向については、行き過ぎた反動から、ある程度の水準修正が入るとみられているが、現段階で、本格的な戻りにつながると見る関係者は少ない。
市場では、「ソブリンとしてはいいレベルである、３０〜４０ｂｐまで戻るかは別として、６０ｂｐに近い水準は明らかに行き過ぎであり、水準を是正する動きに入ったとみていいだろう」（アール・ピー・テックの河合氏）との見方が示されている。
また、ドイツ証券・クレジットデリバティブアナリストの徳勝礼子氏は、「長期的な見方は何ら変わらないが、年明けから急激に上昇した反動から、一時的に縮小しているとみていいだろう。長期的な視野でみて、国内でポジティブな材料が出た訳でもないことから、急激にプレミアムが縮小するということはないとみている。ただ、唯一ポジティブな要因としてあげられるのは、米国景気の持ち直しで日本の輸出が伸びているなど、米国の景気動向だと言っていいだろう」と指摘したうえで、ムーディーズによる日本国債の２ノッチの格下げ懸念は、「既にマーケットプライスに織り込み済みだ」と述べている。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。