あなたは、自動車やオートバイの運転をしますか?私は原付のみ運転し、時々、通勤にも使っています。運転は楽しいものですが、事故は厄介です。事故を防ぐために、自分が安全運転をしていても事故に巻き込まれることもあります。運転者の心理状態は様々で、例えば地方から金策に来ていて今日中に100万円作って、夕方の5時までに帰らなければならない人の運転は当然ながらかなり乱暴になりやすく、事故を起こしやすい因子を抱えながら運転していると言えます。
為替市場の参加者も一人一人をよく観察すると、運転者の心理状態が様々なのと似ています。例えば、今日中に100万円もうける必要に迫られているディーラーは無茶なことをしそうです。年度末が近くなると、会社として、利益のあるものを確定させたいと言うニーズが有り、益出し(利益が出ているものを売ること)を半ば強要されるケースも有ります。
そういう時にも“無茶な運転”のような常識では考えにくい売り方、買い方が行われます。
ドル/円レートは、このところ132円から135円の範囲での取り引きが続いています。これまで4回、135円突破に挑んだのですが、4回とも跳ね返されました。価格で言うと1回目が134円98銭、2回目が135円20銭、3回目が135円05銭、4回目が135円02銭です。
突破できない原因は、実は135円を突破すると予想する市場参加者が多いためです。節目を越えて円安が進んでいくためには、ショート(空売りのことです)が増える必要が有ります。そのショートを踏み上げていくことで相場に弾みがつくわけです。現状では、135円近辺まで円安が進むと、ショート(新規のドル売り)が増えるのではなく、ロング(ドル買い)が発生し、利食いの売り(利益確定のドル売り)との綱引きになり、現状は、135円の壁を乗り切れていません。
135円に接近するとショートが増えるには、市場参加者がドル/円レートは132円から135円の一定の範囲内での推移で、上にも下にも抜ける力がないと本気で判断した時に起こります。ちょっと逆説的で、わかりにくいかもしれません。
どういう条件が整えば、市場関係者が本気で132円から135円の範囲での取り引きが続くと判断するのでしょう。おそらくは、もう後何回か、135円越えにトライし、失敗することや、132円を割ってもすぐに回復することを経験するうちに、上も下も堅いとの認識が次第に増えていくことが条件なのでしょう。
132円を割ったときに、ある銀行が131円90銭に顧客からの売り注文を持っていて、市場で100本(1本=100万ドル=約1億3千万円)程度の売りを出したのですが、わずか5銭しか、円高にならず(つまり131円85銭まで)、市場関係者にドルの底堅さを強く印象づけました。
3月4日、19:00現在、日本株高に伴い、円高が進み、132円10銭近辺で推移しています。おそらく、今後は131円50銭から135円50銭での推移と予想しています。ただし、131円50銭を割り込めば事情は変わってきますが、割り込まずに、市場関係者が円高に走ってしまうとの恐怖感が最高潮に高まったときを境にして、円安に回帰していくと見ています。
外国債券ファンドマネージャー 中村 高之
提供:株式会社FP総研