金利1%台の超低金利は、現在の日本を除くと過去400年間に2例しかない「異常事態」であるが、いずれも国際金融危機や戦争によって終止符を打っている。
最初の事例は1600年前後のイタリア・ジェノアである。8年に亘って続いた金利1%台の低金利は、1622年に突然1%台から4%まで跳ね上がっている。その背景には、ジェノアの後ろ盾となっていた宗主国スペインの財政が対英戦費の増大によって破綻し、ジェノアも国際的信用を失って低利の資金調達が困難になった、という情勢の変化があった。
2度目の事例は1930年代の米国である。大恐慌期の金利は1929年の株価暴落後は一貫して下落したと思われがちだが、1931年9月と1941年12月の2回の転機があった。1931年9月の金利反転は「金本位制停止」によってもたらされている。「金本位制停止」とは、英国の信用不安を危惧した海外投資家がポンドと金との交換に殺到し、金本位制の原資となる金が底をついてしまったことから、英国当局がポンドと金との交換を停止したものである。その結果、金の裏打ちを欠いた基軸通貨ポンドは単なるペーパーマネーとなってしまい、そのままでは暴落する恐れが大きかったことから、英国は金利を引き上げてポンド防衛を図った。しかし、基軸通貨国の金利引き上げはあまりにも影響が大きく、全世界の金利が連鎖的に上昇して、大不況下の世界経済に壊滅的な打撃を与える結果となった。
こうした1600年代ジェノアでの出来事や1931年の金本位制停止は、今で言えば、国際金融危機によって金利が上昇したということである。こうした事例を現在に当てはめるならば、中南米諸国の経済破綻によって基軸通貨ドルの信用が失墜し、資金繰りに窮した世界最大の借金国である米国は金利を引き上げてドル安を阻止するイメージとなる。
もう1つの金利上昇要因は戦争である。米国の長期金利が1.85%まで下落したのは1941年11月で、その翌月から金利が上昇している。つまり、米国の超低金利は真珠湾攻撃によって終焉を迎えたのである。その後も米国の金利は、1953年6月に勃発した朝鮮戦争や1990年8月のイラクによるクウェート侵略、1999年2月のユーゴ空爆といった戦争を契機に上昇に転じている。ブッシュ米大統領は、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」3ヵ国と名指して非難しているが、こうした国に対する軍事的緊張が高まるならば、現在は落ち着いている米国金利も反転上昇するのではないか。
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