会社更生法下で経営再建中の大手スーパーのマイカルが、破たん前に証券化の手法を使って売却した店舗の家賃について、今月25日の支払い分から停止を検討していることを、機関投資家に伝えたことが9日、明らかになった。マイカルは破たん前の99年と2000年に黒字店舗を担保に社債を発行し、機関投資家はマイカルが支払っている家賃を原資に配当金を受け取っている。家賃の支払いが止まれば、配当金が受け取れない地方銀行などの機関投資家に影響を与えるだけでなく、日本の証券化市場の不透明さが指摘される懸念もある。
マイカルと機関投資家は、証券化された店舗の更生法上の取り扱いを巡って意見が対立している。マイカルは特定目的会社(SPC)を作って、20の黒字店舗の所有権を移し、これを担保に社債を発行した。都銀や地銀などの機関投資家が社債を購入し、総額1385億円を調達してリストラ資金に充てた。
関係者によると、マイカル側は、SPCに支払っている年間90億円の家賃が、更生法の手続きに沿って債権カット(弁済免除)の割合などが決められる更生担保権に当たると主張しているという。通常、更生法を申請した企業向けの債権は、債権回収や担保不動産の処分が禁止される。このため、今回のマイカルの証券化のケースが更生担保権に認定されると、SPCは店舗の処分ができなくなり、債権の一部がカットされて、社債の価値が低下する可能性が高まる。
一般的に、証券化の手法で売却された店舗は、マイカルが破たんしても、テナントを入れ替えれば、家賃収入を得て配当を受け取ることができると考えられていた。更生担保権になれば投資の前提条件が変わってしまうことになる。
更生法上の取り扱いが問題になったのはマイカルが初めて。独協大学法学部の高木新二郎教授(倒産法)は「(実質的な店舗の所有権が移転しているため)更生担保権として認めるのは無理があり、証券化の手法を否定することになりかねない」と指摘している。
(3月10日03:05)