【シリコンバレー=小柳建彦】
米国でストックオプション(自社株購入権)に対する風当たりが強まっている。超党派議員がエンロン事件をきっかけに、企業が税務上損金算入できる額を制限する法案を議会に提出した。ブッシュ大統領の企業改革案でも、会計処理の変更が検討された。制度を多用するハイテク業界は制度存続をめざして議会と綱引きすることになる。
エンロン事件では、同社が会計上は多額の利益を上げながら、法人所得税をほとんど払っていなかったことが問題になった。2000年までの5年間に6億ドルに上るストックオプション報酬供与額を税務上は損金として申告し、企業会計上はまったく費用計上していなかった点が問題視された。これは現行の税法と企業会計基準からみれば合法だ。従業員や幹部向けのストックオプション供与額(推定報酬額)は一種の人件費として損金算入できる。企業会計基準では欄外注記が義務づけられているだけで、多くの米企業がエンロンと同様に税務と企業会計で別処理をしている。このため、制度そのものを変えるべきだという主張がこのところ力を増している。