メリルリンチによる日本株推奨比重の引き上げや、日本株のカラ売り規制強化などを反映し、日本株式市場のセンチメントが好転しているなか、7日の東京市場でドル/円は、1月7日に付けた年初来安値130.37円を更新し、一時129円前半に急落した。
週初の133円半ばから約4円近く水準を下げた形だが、日本のファンダメンタルズが依然として弱いとの見方が多い中で、円高のトレンドに入ったとは考えにくいという。
6日のNY市場では、ドルロングの投げなどで130.51円まで下落。7日の東京市場でドル/円は、午後1時以降は下げ足を速め、7日の高値(130.90円)から1円50銭以上下落し、午後5時前には、129円前半で取引されている。
市場では、午後の急落について、「日経平均株価の上昇がきっかけとなっている」(INGベアリング証券・資金為替部ディレクターの加藤範之氏)との声が聞かれるなど、後場の株式市場は、日経平均株価が一時、前日に比べ300円を超す上昇となった。
現段階では、「株価の上昇に懐疑的で、円高方向に確信はもてないながらも、今まで日本売りを仕掛けていた向きによる悲観的なセンチメントが相当はけた格好で、日本経済に対する悲観的な見方と芽生え始めた楽観的な見方が混在している状況だ」(信託銀)という。
今後の行方に注目が集まるところだが、市場では、「円高トレンドに入ることは、現段階では極めて考えにくい」(JPモルガン・チェース銀行・為替資金本部副本部長の富田公彦氏)との声が複数の関係者から聞かれる。
ただ、「短期的に突っ込むリスクがある。まだ、ポジション的にはロングだ」(シティバンク・国際金融本部外国為替マーケティング・バイスプレジデントの稲村秀彦氏)といい、まずは128円近辺まで下落する可能性があるという。
円高トレンドに入ったとは考えにくいとの理由として、JPモルガン・チェース銀行・富田氏は、「JPモルガン・チェース銀行独自のリスク志向インデックスによると、依然として円を売ってドルを買うほうが過去の経験則からいってワークしやすい状況に変わりなく、低金利通貨はどうしても弱くなりやすい」と話している。
また、INGベアリング証券・加藤氏は、「中長期的な向きからのポジション調整が入っており、128円近辺までの下げもあり得る。ただ、日本のファンダメンタルズに対する見方に変化はない。仮に、ファンダメンタルズに非常に追い風が吹けば、むしろ日本を見直す、円を見直す気運が高まってくるが、今のところそういったシナリオは少数派だ」との見方を示している。
さらに、シティバンク・稲村氏は、「130〜128.50円にかけては、ストップロスが多く、ロスカットの売りが並んでおり、129円割れから、128円前半までは一つの水準としてみていいかもしれない。日本の政策好感という形ではなく、あくまでも日本株上昇を材料にしたヘッジファンド系などの海外勢によるドル売りである。また、日銀による流動性供給が途絶えない、もしくはさらに増えるということであれば基本的な方向では大きな円安要因となるとみている」としている。