水産庁はノルウェーから鯨肉を輸入する方針を固めた。91年度に輸入を打ち切って以来、11年ぶりの再開。5月にも数十トン程度、来年以降は100トンを超えない量としている。サンプル2、3キロはすでに到着、経済産業省の輸入承認を待っている。山口県下関市で4〜5月に開かれる国際捕鯨委員会(IWC)年次会合にあわせて捕鯨推進国同士の連携強化を図ると同時に、鯨肉の供給増による国内消費の拡大を目指す。
日本はかつて商業捕鯨を行う一方、海外から鯨肉を輸入していた。ピークの62年度の捕獲量は22万6000トン、輸入量は1万4000トン。しかしIWCが商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を決めたため調査捕鯨に切り替え、輸入も中止した。
輸入するのはミンククジラの赤身。ポリ塩化ビフェニール(PCB)など有害物質の蓄積が問題視されている脂身は当面対象から外す。
密輸防止のため、輸入窓口は水産庁が調査捕鯨を委託している日本鯨類研究所(東京=鯨研)と、鯨研が鯨肉販売を委託している共同船舶(東京)に当初の2、3年は一本化する。軌道に乗れば、流通を民間にゆだねることも検討する。
ミンククジラはワシントン条約で「絶滅の恐れがある種」に指定され、学術研究目的以外は国際取引が禁止されている。しかし日本とノルウェーはこの決定を留保、両国間の輸出入は国際法上問題ないという立場をとっている。
ノルウェーはモラトリアムに異議を申し立て、93年に商業捕鯨を再開。昨年1月に鯨肉の輸出解禁を発表した。水産庁とノルウェー政府は昨年10月の実務レベル協議で、日本の輸入は今年の春先を努力目標とすることなどを文書で確認した。水産庁は昨年12月、サンプルの輸入を申請した。
輸入にあたっては、密漁や密輸の鯨肉と区別するため、輸出先と輸入元で鯨の個体をそれぞれ確認するDNA登録システムの整備を進めてきた。有害物質についても安全性を調べる。
輸入の理由について、水産庁国際課は「IWCで主張を同じくするノルウェーと協調するとともに、国内の鯨肉の流通量を増やして若い世代にも食べてもらいたい」と説明している。経済産業省貿易審査課は「法的に断る理由はない。できるだけ早く承認したい」としている。(