今まで頼みの綱だったMMFでさえ元本割れの不安が。金融不安が長引く今、元本確保の運用手段といえば預金や国債くらい。でもそこには目に見えないリスクが・・・?
皆さんはこの長く続く超低金利時代の中、いかにして元本の安全を確保しながらより有利な資産運用をしようかと思案していることであろう。4月からはいよいよペイオフが始まり、銀行の定期預金であれば元本1000万円とその利息までしか保証されなくなる。となると、定期預金より利率がいいから国債にでもしようかしら・・・などと考える人も結構いるかも知れない。
確かにペイオフが4月から予定通り実施されたとしても、1000万円ずつ異なる金融機関に預け替えれば元本は保証されることになる。また、国債であっても、日本という国さえ潰れなければ満期後に元本は全額戻ってくることになる。そういった面では定期預金も国債も見た目は元本割れのリスクはないことになる。リスクの高い株式投資などを敬遠しがちな日本国民にとっては定期預金や国債は安全性の面から魅力的な金融商品なのかも知れない。
だが、ちょっと考え直してもらいたい。「リスク」って一体何なのだろう。株式はリスクが高く、銀行預金はリスクが少ない、という意味での「リスク」は、「元本が確保できる安全性」に対するものであり、これが一般に言われるリスクである。実は、リスクにはもう一つ、非常に重要なリスクがある。それが「インフレリスク」である。
デフレが長く続く現在では、インフレなどほとんどの人が無関心であろう。インフレの怖いところは、お金の価値がどんどん下がっていくことであり、せっかく一生懸命仕事をしてコツコツ貯金して将来の備えにしていても、スーパーインフレが来ればあっという間にその努力が水の泡となってしまうのだ。
そもそもデフレの状況で、資産運用に大きな成果を得ようというのが誤っている。デフレでは企業の売上が落ちるから株式市場も低迷するし、不景気で金利も下落するから預金しても大した利息もつかない。それならば、無理をせずに普通預金なり郵便貯金なりでじっと我慢して、チャンスが来るまで待っていてもいいのではないか。デフレの後はインフレになる。それがいつかは分からないが、今無理に資金を定期預金や国債に振り向けて、資金を固定させている間にインフレになったら、いくら名目的な元本が確保されていても、実質的なお金の価値は目減りしてしまう。元本確保のために定期預金にしたつもりが、実質的には元本割れになってしまうのである。
政府はデフレを断固阻止すると言っているし、日銀は金融緩和を続けてインフレへ何とか誘導しようとしている。デフレ、デフレと騒いではいるが、すでにインフレの兆しは出てきているのかも知れない。例えば長期国債金利の上昇、円安の進行、金価格の上昇、そして身近なところではマクドナルドのハンバーガー値上げなど・・・
みんながインフレに気付いてから行動するのでは遅い。インフレへの準備を少しずつ始めてもいい時期なのかも知れない。インフレになったら株式と不動産は上昇するのが歴史的事実である。何に投資してもリスクはついて来る。名目的な元本確保を求めて定期預金や国債にするのか、それともインフレヘッジのために株式を購入して元本割れのリスクを取りに行くのか、それとも・・・皆さんの決断をする時期がもうそこまで来ている。
公認会計士 足立武志
提供:株式会社FP総研