経営再建中の準大手ゼネコン・飛島建設=写真=は5日、同じみずほフィナンシャルグループの富士銀行系の大手ゼネコン・大成建設と業務提携する方針を発表した。富士銀行から100億円強の融資を受けてグループ企業に対する債務保証約880億円を一括解消、連結有利子負債を3年間で500億円圧縮する。飛島は、銀行の全面支援とスーパーゼネコンの後ろ盾で生き残りを模索する。
飛島が発表した新3カ年計画によると、大成との間で完成工事保証の引き受けのほか、資機材の購買協力、建築部門への人材派遣や技術協力について業務提携する。資本提携については行わず、飛島はマンション事業からの撤退もしないという。
同時に飛島は、グループ会社への保証債務886億円を時価評価して大きく割り引いたうえで一括解消するが、この原資として富士銀が100億円強を融資。その上で、富士銀に114億円の債務株式化(デット・エクイティ・スワップ)を要請する。
こうした財務体質の改善策により、平成17年3月までに有利子負債を500億円圧縮し、残高を850億円とするという。
飛島はバブル期に投資した不動産の価格が急落したことで過大な有利子負債を抱えたため、借入金の大半をグループ会社に移管、飛島が債務保証する形を取る第1次再建計画を立てた。
しかし、借金返済のメドはたたず、9年に飛島の債務保証している7400億円のうち6400億円について富士銀などから返済の免除を受けた。それでも20年間という長期の再建計画を市場は好感せず、昨年11月には人員削減や売上規模の縮小など新たな5カ年計画を策定した。
その後も株価は昨年12月6日に12円をつけるなど低迷。今月に入って同じみずほグループが主力取引行で、経営統合まで検討していた佐藤工業が倒産に追い込まれたことで、単独での再建は困難な状況となり、抜本的な再建計画の見直しを迫られていた。
記者会見した飛島の富松義晴社長は、「経営環境が一段と厳しさを増した」と語った。
昨年12月に青木建設、今月3日には佐藤工業が事実上倒産。一方、三井建設と住友建設の統合にフジタが合流、長谷工コーポレーションへの金融支援など、金融庁と銀行によるゼネコンの“選別”も進んでいる。
残る借金棒引きゼネコンのうち、みずほグループが主力取引先のハザマも金融支援を要請するとの見方が有力で、三井住友銀行が主力取引先で12年に債権放棄を受けたばかりの熊谷組についても、銀行主導で新たな再建策が打ち出されるものとみられる。
寄らば大樹の陰、とばかり銀行やスーパーゼネコンの助けで多くのゼネコンが生き残りを図ったが、財政再建を進める小泉内閣の下、公共事業は引き続き縮小傾向にあり、民間の建設需要も頭打ち状態が続いている。
富松社長は「営業利益100億円を安定的に確保していきたい」と見通しを語るが、延命措置でたとえ倒産の事態は免れても、建設業界への逆風はおさまる気配がない。
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大成建設《1801》との提携やみずほグループの金融支援策が報じられた飛島建設《1805》が、一時、前日比8円高の43円と急反発。一方、提携先の大成が一時、同40円安の289円と急反落するなど、明暗を分けた。
3日の佐藤工の経営破たんを受けて、飛島は経営先行き懸念から4日の取引で前週末比9円安の三5円と急落していたが、5日の包括提携報道をきっかけに一転して買いが膨らんだ。
大成については「提携報道が事実ならば、大成の収益が圧迫されるのは必至」(銀行系証券)との見方が根強いため、売りが先行。「銀行の都合で飛島を支援させる行為は、大成に投資してきた向きを裏切る行為」(欧州系運用会社)との批判も出ている。
新たな再建策が注目されるハザマ《1837》は一時、同1円安の37円。主力取引行が同じ第一勧業銀行である佐藤工が破たんしており、「大成のような有力支援企業も見当たらない」(銀行系証券)と楽観視する向きは少ない。熊谷組《1861》は同1円高の30円をつけた。
その他の大手ゼネコンでは清水建設《1803》が一時、前日比5円安の474円、鹿島《1812》が同16円安の314円とそろって下落している。