都内の段ボールなどの製造業者が加入する「紙器段ボール箱工業健康保険組合」(東京都墨田区、五十嵐章訓理事長)が一昨年、アルゼンチンの国債16億円を購入し、同国の経済危機から回収が困難になっている。指導監督を行っている関東信越厚生局は「危機管理が好ましくなかったといわざるをえない」として、調査に乗り出す方針。
同組合によると、資金の運用を担当していた前常務理事が理事会に諮らないまま、一昨年11月に組合員の健康保険料の積立金など約30億円のうち、約16億円をアルゼンチン債購入に充てていた。
昨年夏、同国の経済状況の悪化が伝えられた際、組合の中から運用を懸念する声も上がったが、前常務理事は「国が消滅することはないので大丈夫」と主張していたという。
積立金は年度ごとの決算で出た余剰金を積み立てているもので、年度当初の見込みを超えた支払いが出る場合などに取り崩して使っている。今回の事態で、医療費の支払いが滞ることはなく、保険料にも影響しないという。
同組合は、現在、調査委員会を作って、この前常務理事や購入した証券会社などから事情を聞いている。責任をとって、前常務理事と前理事長は今年1月に辞任している。
同組合には、都内など約700事業所の1万6000人が加入。社員は平均で23人という零細企業がほとんどだ。現在の渡辺守・常務理事は「大切な保険料だったのに、前常務理事に任せきりだった」としている。
(2月15日03:04)