「もっと上がってくれればいいんだけどね。デフレ対策をしっかりやっていかなければ。」誰の言葉かといえば小泉首相のコメントだという。「株価に一喜一憂しない」と公言していた小泉首相のこの発言が変化した意味は大きいと思う。また、金融庁の実施する特別検査の結果を公表する方針だという。これも好材料だ。銀行の不良債権を徹底的に処理するよう当局が積極関与していくその姿勢は従来通りだが、その結果をディスクローズすることで市場はそれを信用し易くなるだろう。
国土交通省は、資産デフレ脱却を狙い登録免許税や不動産取得税、固定資産税等の不動産に係わる土地税制の課税軽減を打ち出すそうだ。そして、これが税制改正論議に反映されることを目指すという。自民税調でも土地流通課税の軽減、個人の金融資産の貯蓄から投資へのシフトを促す税制改正等市場が期待する方向で論議が進む状況になっている。
一方、みずほフィナンシャルグループは、自己資本自力増強のために優先出資証券3500億円の発行を完了した。朝日生命は、リストラの一環として内勤職員の削減数を2000人に倍増し内勤社員の給与を平均1割程度カットし、基金の調達を総額1500億円に増やすという。また、2003年春メドの三井、住友建設の統合にフジタが会社分割して合流する要請をしているという。追い詰められて追い詰められてようやく、いろいろなことが動き出しつつある。
オオカミ少年は最後にオオカミに食べられてしまった。その童話から考えるに、おそらく銀行の不良債権処理は昨年の中間決算発表時点での引当金積み増しやトップの交代、法定準備金の取り崩し、自力資本増強で実は本当は不良債権処理の峠は越えているのだろう。オオカミ少年の童話に続きがあり、最後の少年の警告を信じなかった村人が次々にオオカミに食べられてしまうというものであると仮定すると、その村民は、金融危機の発生を信じて銀行株の下値を叩き売った売り方になる可能性がある。
日本のトップが「株が上がって欲しい」と姿勢を180度転換した。市場に優しい政策が打ち出されるならば、今後の投資戦略は「押し目買い」で良さそうだ。小泉政権誕生以来の株式市場の下落は、市場に優しい政策が足りなかったから市場がヒステリーを起こしていたのだから。