大山鳴動して、出てきたのはナントカが2匹だけ−。日本経済の命運を握る不良債権問題の最大の焦点だった債権放棄組ゼネコン処理は、佐藤工業が3日に会社更生法の適用を申請し事実上倒産したことで、ほぼ決着した。放棄組では佐藤工業と同じみずほフィナンシャルがメーンバンクのハザマ、飛島建設と、三井住友銀行がメーンの熊谷組が残されているが、いずれも救済される見通しで、法的整理で陶汰されたのは、青木建設と佐藤工業の2社。結局、かつての債権放棄と同じ問題先送りが繰り返されただけで、抜本処理にはほど遠いのが実情だ。
「昨年12月の青木建設で幕が開け、佐藤工業で幕引き。結局、金融庁のシナリオ通りにことが進んだ」。大手ゼネコン幹部はこう指摘する。
青木と佐藤が“いけにえ”、に選ばれたのは、「いずれも債権放棄額が中途半端で、再建期間も青木が20年、佐藤も10年と長期に及んでいた。しかも、トンネルの佐藤、海洋土木の青木といわれたように、公共事業への依存度が高かったため」(ゼネコン担当証券アナリスト)だ。陶汰されるべくして、陶汰されたといえる。
放棄組ゼネコンでは、青木の倒産に続いて、三井建設が住友建設と経営統合することで合意。さらに、フジタも事業規模を大縮小した上で、これに合流することになった。さらに、長谷工コーポレーションは金融支援と持ち株会社化による新たな再建計画を発表した。
残る焦点は3社となったが、佐藤工業と同じみずほ系の飛島建設は数百億円規模の新たな金融支援を要請する方針を固めている。ハザマも新たな再建策の検討に着手する見通しだ。佐藤を含めた3社は、経営統合による“みずほ建設構想”を進めてきており、佐藤が抜けてすんなりと飛島、ハザマの2社統合へと進むかが焦点だ。佐藤の倒産ではっきりしたように建設市場の規模はすでにピーク時の4分の3に減り、年間60兆円規模。これがさらに「50兆円くらいにまで減る」(ゼネコン担当アナリスト)状況のなかでどう進展するかだ。
「更生法適用で身奇麗になった佐藤工業も、結局、あとで合流するという可能性も否定できない。みずほには清水建設や大成建設もあり、スーパーゼネコンを巻き込んだ再編構想が浮上する可能性もある」(みずほグループ関係者)
三井住友銀の熊谷組も自力再建を目指し、三井・住友・フジタの統合三社のほか、支援を受けているスーパーゼネコンの鹿島との連携を模索していくとみられる。
債権放棄組の新たな方向性がほぼ出そろった形だが、果たして抜本処理といえるのか。
「かつて債権放棄を決めたときも、銀行の体力から放棄可能な金額を逆算して決めたが、今回もまったく同じ構図。銀行が法的整理による損失にどこまで耐えられるかを大前提にして、2社の法的整理が決まった。公的資金を再注入すれば、さらに抜本的な処理に踏み込めたはずだが、金融庁も大手銀も公的資金はいらないとの建前を崩そうとはしなかった」(外資系証券金融アナリスト)
いったい何度同じ過ちを繰り返せば気が済むのだろう。