先送りされ続けてきた佐藤工業問題が、金融機関の決算期である3月を迎えようやく決着した。しかし、業績低迷、株価100円割れの過剰債務企業は、まだまだ市場にゾロゾロ。支援する金融機関も体力は限界に接近中で、株式の評価損も迫られるため、綱渡りの決算が強いられる。こうした中、今後さらに不良債権処理を進めることは不可避で、公的資金の再注入を迫る声も高まることは必至だ。
みずほフィナンシャルグループは、佐藤工業の破(は)綻(たん)に伴うこの3月期決算で、業績予測を修正する必要がないことを強調した。これは、金融庁が銀行の大口貸出先を対象に進めている特別検査を先取りして引当金を積み増し、倒産に備えていたため。いわば、みずほ内では覚悟のできていた破綻だったといえる。
しかし、過剰債務企業は、ゼネコンに限らず、ノンバンク、流通、不動産など数多い。再建策が決まったとはいえ、支援内容が固まっていないゼネコンもある。金融機関幹部も「すべてのケースで引き当てが十分であるとはとてもいえない」と打ち明ける。
金融機関は、期末までに、こうしたケースひとつひとつについて当面の対応をふるいにかけることになる。
もちろん、支援をするとなれば、回収に見込みがたたなければならない。支援決定後に景気の下ぶれや株価下落などの直撃を受ければ、結局は破綻し、支援が無駄に終わるどころか、「やっぱり問題の先送りだった」と銀行自身の信頼を損なうことに。
一方で、支援を打ち切るとなれば、引き当て不足が顕在化し、資本の傷みが即刻、表面化することになる。ただでさえ株安、格下げラッシュにみまわれる中、さらなる逆風をくらうことになりかねない。さらに、資本不足に陥れば、公的資金の再注入も現実味を帯びる。
もっとも、政府は公的資金再注入については、まだ明言を避けている。注入に積極的なはずの竹中平蔵経済財政担当相も「たとえば自己資本比率が6%だったら、(国際的な営業をできる基準の)8%に足りないから公的資金注入しか選択肢がないかといえば、そうではない。国内営業に特化すればいい。ならば2%だったら注入せざるをえないかというと、それも違う。退出という選択もある」と、多様な選択があることを理由に、資本注入の明言を避けている。
ある金融ウォッチャーは「結局は、金融機関の危険度ランクをつけることを避けているということ。国民は金融機関を選択する手がかりがなく、すべての金融機関を疑わざるをえず、政府の目指す金融システムの信頼回復と矛盾する。その間、銀行は国民から不審の目にさらされ続ける」と指摘する。
公的資金注入議論がくすぶる中、銀行はいよいよ綱渡りの3月決算に臨むことになる。