「やはり一部の大手銀行が年度末となる3月末へ向け、資金ショート寸前にまで追い詰められつつある、とみて間違いない。逆にそうでなければ、日銀があのような手を打ってくる必要性はどこにもない」
大手都銀のマーケット担当部長がこう言ってみせる。
去る2月28日、日本銀行は政策委員会・金融政策決定会合を開き、一段の金融緩和(追加緩和)に踏み切ることを決めた。
前述のコメントに登場する「あのような手」とは、この“追加緩和”に盛り込まれた、以下に示す施策のことを指す。
その施策とは、「ロンバート型貸出制度について3月1日から4月15日までの全営業日、公定歩合での利用を可能にする」という項目を指す。
この“ロンバート型貸出制度”とは、2001年2月に導入された新しい制度で日銀が金融機関側からの申し入れに対しては原則的には無条件で応じることを前提に、担保(国債)の範囲内で賃金を貸し出す制度のことを言う。
「ただしこの“ロンバート型貸出制度”が使える期間は、これまで1カ月間に5営業日までに限定されていたのです。日銀の今回の決定は、この制限を取り払ってしまったことになります…」(日銀関係者)
これまでインターバンク市場(銀行間金融市場)では、一部の大手銀行が賃金調達に苦しんでいる、といううわさが根強くささやかれていた。
ここではその“一部の大手銀行”について、X銀行としておくことにする。
「X銀行について言えば、昨年後半から急激な信用力の低下が起こっていたのです。このため、コール市場に代表されるインターバンク市場において資金が全く取れない状況に陥っていた」(大手都銀マーケット担当責任者)
結局のところ、このX銀行は同行の親密銀行であるY銀行を経由する形で、資金調達を行っていた。
「そうはいっても、このY銀行とて信用力の面で万全というわけではありません。むしろマーケットでは“負け組”に区分されているのです…」(前述同)
目前に迫った“3月末”は、期末という特殊要因から資金需要が最も旺盛になるタイミングなのだ。
そしてこうした状況に追い込まれたX銀行の救済措置として日銀が打ち出してきたのが、前述した“措置”だったのである。
「そうかといって、ロンバート貸出制度を利用するためには、国債等の担保が必要です。しかしX銀行は、そうした担保すらも枯渇してきているのです。最終的にはどうしても、無担保−つまり“信用”で資金を引っ張ってくる必要があるのです−」(大手都銀幹部)
果たして3月末の段階でX銀行の資金繰りはつくのかどうか、この点には要注目だ、と言えよう。
「最悪の事態が発生した場合には、日銀としてはX銀行に対する“日銀特融”も公的資金による資本注入とワンパッケージの形で視野に入れている」(日銀関係者)
どうやら「3月危機」は未だに去らず、といったところだろうか。
2002/3/4