【政局の焦点】
●与党は単独でも予算案を衆院通過へ
政局は、2002年度予算案の衆院通過をにらみ、鈴木宗男前衆院議運委員長の証人喚問をいつにするかが大きな焦点となっている。予算案の年度内成立を図るためにはギリギリ6日の衆院採決が不可欠。一方、証人喚問は議院証言法などで喚問の議決後5日間の準備期間を置く事が定められており、予算案衆院通過前の喚問実現は不可能。野党側はあくまでこれを求めているが、与党側は単独採決を強行しても、予算案の6日までの衆院通過を図る構え。これに抗議して、野党側が審議を全面的に拒否、国会が空転することもあり得るが、ここは鈴木氏を喚問に引っ張り出して疑惑を追及する方が得策との現実論が先行しよう。このため、証人喚問は遅くとも11日ごろには実現する見通しだ。
●「職務権限」と「裏金」の有無が焦点
鈴木氏の“疑惑”については、北方四島支援事業などあまりに多くの“事実”がいっぺんに噴き出したため、ひと括りにこうなるだろうとの見通しを示すことは困難。ただ、もし仮に今後、検察庁が捜査に乗り出すとしたら、「職務権限」と「裏金」の存在の有無が焦点となる。政府首脳の職務権限については、ロッキード事件の際の田中角栄元首相やリクルート事件の際の藤波孝生官房長官に、各省庁の所管事項であっても広く職務権限を認めた例がある。このため鈴木氏についても、官房副長官時代の疑惑については職務権限が発生している可能性がある。
その場合、裏金の存在がもし明らかになれば、単純収賄罪や受託収賄罪が成立しようし、公務員に不正な行為をさせるあっせん収賄罪の適用も考えられる。一方、裏金がなく、政治資金規正法で合法的に処理された政治献金であっても、工事発注後に献金額が急増していれば、賄賂として認定されるケースもある。ただ、これまで得ている情報では、検察が具体的に動き出したとの事実は確認されていない。捜査に着手するとしても、検察庁が人事異動を終える3月末以降、4月からの新陣容によって行われる見通しだ。
ただ検察は政治家相手の事件では、非常に政治的判断をする場合が多く、時の為政者がどう考えているかによって捜査方針が大きく左右される。その意味では、小泉純一郎首相が「鈴木問題」の政権への影響をどうとらえているのかが最終的な決め手になるだろう。
●民主は「年内解散辞さず」の見方
野党側は鈴木氏の疑惑について、田中真紀子前外相の「小泉批判」に続く“敵失”と見て、経済・景気問題と合わせ徹底的に小泉政権を追及していく方針。民主党の鳩山由紀夫代表や菅直人幹事長らは、小泉内閣の支持率は今後さらに下がり、3月末には「政権が立ち行かなくなる」と見ており、「年内の衆院解散」の可能性も辞さずの構え。このため、衆院選の候補者選定を急ぐとともに、自由、社民、共産各党との連係を強化する方針だ。ただ「鈴木問題」では共産党に名をなさしめたほか、自由、社民両党との「薩長土肥(土井)」連合構想も例によって小沢一郎自由党党首との確執がすぐ頭をもたげ、今のところ、民主党内の支持も得られていない状況。このため、野党4党が今後も国会内共闘を維持できるかどうかは、当面、鈴木氏喚問での追及の出来次第にかかっている。
●依然、意気軒高な小泉首相
では攻められる一方の小泉首相が消沈しているのかと言えば、天性の楽天家なのか、少なくとも表面上は依然意気軒高。1日に都内のホテルで開かれた政治評論家らの集まり「山里会」に出席した首相は、先に政府が発表した総合デフレ対策について「うまくいっただろう」と自画自賛。田中前外相の更迭についても「後世、最もいい裁きだったと言われる」と強気で、田中氏が参考人招致の際述べた「(首相が)スカートの裾を踏んでいた」との今や有名になった言葉も「踏むほど長いスカートを履いたのは見た事がない」と、切り返していたという。
首相はさすがに内閣支持率が30ポイントも下落したことについては「20%くらいと思っていた」と、“予想以上”だったことを認めたものの、安定的な政権維持のメルクマールとなる「50%」については依然自信を示していたという。
●信ぴょう性は面接調査が上
その内閣支持率だが、朝日新聞が3日付で発表した全国世論調査(電話)によると、前回の2月調査に比べ5ポイント下落し、44%だった。世論調査の信ぴょう性については前にも触れたことがあるが、電話調査と面接調査では電話の方が答えやすい人が答える、あるいは普段自宅に居て、ワイドショーをよく見る人が答える可能性が大きいなどの理由で、面接の方が信用がおけるとされている。これに従えば、読売新聞が2月26日付で発表した面接調査による内閣支持率53%の方がより正確な数字とみてよいだろう。ただ同調査においても前回より24.6ポイントも下落しているという事実には変わりはない。
ちなみに民放TV各局が主に首都圏を対象に行っている電話調査は“誘導尋問”の疑いがある場合が多いとされ、大雑把な傾向を知るだけならともかく、世論調査としての信ぴょう性からは最も遠い存在と言ってよい。
●「不」景気も景気のうち
大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの入場者が3日、世界の数あるテーマパークの中で最も早く1000万人に達した。皮肉でも何でもなく、行けば1人1万円ほどもかかるこういう所に殺到する「不景気の国」は恐らく世界のどこにもないだろう。もちろん東南アジアからの観光客が多いにしてもだ。小泉首相の後見人を自認する松野頼三元防衛庁長官が昨年暮れ、「『不』景気も景気のうち。不況とは違う。まだまだ余裕がある」と述べていたが、実際、我々は株価や完全失業率などの経済数字にあまりに振り回され過ぎてはいないだろうか。
この原稿をお読みの読者はとっくにご存じだと思うが、年末年始、東京近郊の温泉はどこも一杯で予約を取るのが困難だった。恐らく米同時多発テロの影響で海外旅行を手控えた人達が国内に振り替えたのだろう、北海道への観光客も多かった。またデパートのおせち料理も何万円もする豪華なものが飛ぶように売れたという。
ゼネコンその他の企業倒産が続いているのは事実だろうが、全体として景気がさらに悪化している徴候はない。既に底を打ったとの見方も増えているが、そのことよりも、企業自身がもっと消費者が買いたくなるような商品の開発に力を入れるべきだと思うがどうだろうか。公共事業や公的資金投入などと「お上」に頼り過ぎの傾向が強過ぎる。米国は既にテロとその後の戦争を乗り越え、景気回復への力強い足取りを進めつつある。日本だけがいつまでも「3月危機は本当にあるのだろうか」などと、戦々恐々と委縮している場合ではないだろう。
(政治アナリスト 北 光一)
★莫迦みたい。PKOで三月危機はこなくても実質債務超過の大銀行をペイオフまでに公的資金注入・処理しなかったツケは回ってくるでしょうに。今の株価の上げは崩壊の前の線香花火の最後の輝きです。