金融庁は金融危機の恐れが生じた場合に備え、公的資金による銀行への資本再注入の具体的な検討に入った。注入の際は、取締役の選任・解任に限って議決権を持つ新型の優先株を銀行に発行させる方針だ。従来は原則として議決権のない優先株を発行させ、銀行経営への国の関与を極力避けてきたが、今後は経営責任を追及しやすくする。銀行救済の批判をかわし、再注入の環境づくりを進める狙いがある。
預金保険法は「国や地域の信用秩序に極めて重大な支障が生じるおそれ」がある場合に、首相や関係閣僚らで構成する金融危機対応会議を開いたうえ、首相が必要と認定すれば預金保険機構に設けた15兆円の公的資金枠を使って資本注入などを実行できる。
金融庁は具体的なケースとして、連鎖的な金融破たんの連鎖や大手銀行の株価急落などの事態を想定している。「現在はそのような状態ではない」と説明しているものの、万が1,危機的な状況が近づいた際には迅速な資本注入が必要になるため、具体策の詰めを急ぐ必要があると判断した。