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「朝日」「あさひ」の共倒れ 〜 危うし生保・銀行「もたれ合い」(選択三月号) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 3 月 03 日 00:51:56:

皮肉なものだ。金融の奈落の淵で溺れかけているのがかたや「あさひ」、かたや「朝日」だとは――。
2月半ば、あさひ銀行の資金繰りが切迫していた。大口投資家が預金を引き揚げたのを機に、1千億円を超える資金不足に陥り、埋め合わせがつかなくなったのだ。
銀行間で資金をやり取りするコール市場では今や「あさひ」と聞いただけで資金の出し手が渋るから、市場での資金調達の道は閉ざされている。日銀からロンバート貸し出しを受けようにも、国債などの担保は底をついている。そんな内情が株式市場などに見透かされれば、かさにかかった売り叩きにあい、1998年の日本長期信用銀行の二の舞になってしまう。
足元ではペイオフを控えた預金者が浮き足立っている。あさひの前身のひとつ、旧埼玉銀行のお膝元である埼玉県で預金流出が加速しているのだ。流出した預金は郵貯のほか、東京三菱銀行などに向かった。ゼロ金利下で貸し出し難の現状では、0.084%の預金保険料を考えれば、東京三菱とて預金が増えてももうけにならない。その一方で、東京三菱はあさひの国際部門の買収などで与信を持っているから、あさひに万一のことがあればとばっちりを受けかねない。だから、支店窓口ではやんわりと新規預金を諦めさせようと躍起になっていた。

辛うじて合併承認日に滑り込み

綱渡りだったが、どうにかあさひは資金繰りをつけたのだろう。大和銀行が株主総会であさひとの合併を承認した2月22日まで持ちこたえた。世間の関心が朝日生命の危機に集中していたおかげで、「もう一つのあさひ」は危うく難を逃れたといえる。大和銀とあさひ銀は合併差益を使った決算のお化粧で、金融危機の荒波を乗り切ろうというのだろう。
政府が「金融危機の恐れ」があると宣言し、預金保険法102条に基づく金融危機対応会議を開いて、公的資金の注入を決めるとすれば、第一号が大和・あさひ連合だろうというのが、金融界の通り相場だ。だが、柳沢伯夫金融担当相は「現状は金融危機ではない」と言い張り、公的資金の即時投入を否定し続けている。
「銀行は健全だ」と言い張ってきた森昭治金融庁長官ら事務方がいまさら言い訳もできず、ブレーキをかけているという事情もあるが、「柳沢氏自身のトラウマも見逃せない」と関係者はいう。それは長銀破綻を人身御供にして決定された、前回99年3月の公的資金の注入にまつわるものだ。
当時、金融再生委員長だった柳沢氏は、再生の見込みがないとして大和銀などに対する公的資金注入に反対だったとされる。大和や中央三井信託などの問題銀行はいったん破綻させ、受け皿銀行に譲渡すべきだと考えていたのだ。実質自己資本などを考慮すれば、当時の柳沢氏の判断は正しかったというべきだろう。
だが柳沢氏の判断は、何でもありの景気浮揚策をとっていた小渕恵三内閣の下では通らなかった。大和銀の信託勘定の中身が「パンドラの箱」で何が飛び出すか分からなかったという事情もある。しかも住友、三和の両行が東京シフトを強めるなかで、関西地区の自治体指定金融機関を多く務める大和が破綻すれば関西経済への深刻な打撃が予想された。受け皿銀行を探そうにも住友や三和はそっぽを向き、結局大和を生かすほか道がなかったわけだ。
こうして大和は生き残り、今では金融庁の機関銀行化している。近畿大阪銀行など関西地区の地銀を傘下に収めたほか、関東のあさひも加え、さらに九州の西日本銀行の優先出資証券引き受けや、長谷工コーポレーションの債務株式化にも応じるなど、要はダメ銀行やダメ企業の姥捨て山、夢の島のような存在と化した。が、それを自覚しているのかどうか。
「うちのリストラ努力が認められたからでしょう」。三井住友銀行の合併が決まった直後、大和の幹部は関西地区の預金が増えだしたことをノーテンキに喜んでいたが、関西の金融関係者は唖然として相槌の打ちようもなかった。合併する住友やさくらが懸命に「いわく付き」の取引先を整理しているのに、それらの企業や個人が大和に駆けこみ、取引を始めたという実態に気付いている様子がなかったからだ。
その大和にあさひがくっついたら、どんなシナジー(相乗)効果を発揮するというのだろうか。
2月7日、首相官邸を訪問した保岡興治衆院議員ら自民党国家戦略本部の面々が小泉純一郎首相に公的資金の注入を促した際、首相に手渡した実質自己資本比率の数字が独り歩きしている。公的資金や繰延税金資産を差し引いた大手八大金融機関の実質自己資本比率を0.53%と試算し、UFJ、大和、あさひ、中央三井信託の4行については実質自己資本比率がマイナス(債務超過)と記されていたからだ。

金融庁が目を背けた保岡資料

金融庁は反論しようと同様の前提に立って試算してみたが、実質自己資本比率は国内業務を営むうえで必要な4%を大きく下回っていることには違いがなかった。だが、試算は「解釈の違い」と突っぱねることができる。
むしろ、金融庁などが頭を痛めたのは、保岡資料のなかでも生命保険と銀行の関係を示したくだりなのだ。解約が続き、経営危機に直面する朝日生命の基金や劣後ローンには、第一勧業銀行が1500億円強の資金を拠出しているほか、あさひと大和が合わせて900億円近い資金を拠出している。また朝日生命と並ぶ危機的状況にある三井生命の基金や劣後ローンに対しても、三井住友銀行が1200億円、中央三井信託が1700億円を拠出している。
朝日生命や三井生命に万一のことがあった場合、基金や劣後ローンの返済順位は通常の保険契約に比べて低いために、取りはぐれる恐れが大きい。これは千代田生命や協栄生命の破綻でも経験済み。その影響は第一勧銀や三井住友にとっても甚大だが、ダイエーに対する債権放棄が中途半端に終わったおかげで、みずほは朝日の出資要請(劣後ローンの切り替え)に応じる余地ができた。むしろ致命傷となりかねないのは、「弱い環」であるあさひ、大和、中央三井信託などである。
銀行が生保に基金や劣後ローンの拠出をしたのは、銀行側も生保に劣後ローンの拠出を頼んでいたからだ。株式の含み益という兵糧が底をつくなかで、銀行は国際決済銀行(BIS)規制の自己資本比率、生保はソルベンシーマージン(保険金支払い余力比率)を嵩上げするために、それぞれ「劣後ローンの持ち合い」という信用補完を図ってきたのだ。その金額は銀行が生保に対して2兆円、生保が銀行に対して10兆円にのぼる。
ああ、うるわしき弱者の助け合い。このダブルギアリング(支え合い)は、従来の銀行と企業間の株式持ち合いと性質が違う。英フィナンシャルタイムズ紙が指摘したように、ダブルジョパディ(二重の危険)を内包させている。資金繰りに窮した企業同士が融通手形を振り出して信用を偽装する禁じ手と同じく、「資本の融手」なのだ。
銀行と生保が共倒れの危機に瀕しているという矛盾は、朝日生命の危機で白日の下にさらされた。株式と劣後ローン持ち合いのレバレッジ(梃子の原理)が、株価崩壊による巻き戻しで激烈な信用収縮を起こそうとしている。
その意味であさひ銀行とともに、朝日生命の突然死を回避することに、森長官は全神経を集中してきた。だが、その戦略性のなさは東京海上火災保険との無理な合併が破談に追いこまれたことで暴露される。住友信託銀行との合併を画策して結局失敗した長銀危機の教訓を金融庁は少しも学んでいない。
そもそも、新規契約分野を先に東京海上に合流させ、1年後に既契約分野合併も検討するという二段構えは、時間を勘定に入れていなかった。保険契約の場合、解約のメリットがあるのは若くて健康な人たち。彼らが解約した後には、高齢で不健康な契約者だけが残る。時間が経てば経つほど、朝日のポートフォリオ劣化が進むのだ。
現に合併白紙で前途に展望がなくなった朝日生命は1月以降、怒涛のような保険契約の解約ラッシュに見舞われる。二月下旬になって小康状態だというが、それでも1日当たり解約額は数十億円にのぼる模様だ。現状は嵐の前の静けさに過ぎない。

身売り前提に米国保険とお見合い

保有有価証券の含み損を処理するだけで3月期末のソルベンシーマージン比率が基準となる200%を割るのは必至だからで、そうなると早期是正措置の対象になる。朝日生命に生保版会社更生法である更生特例法の適用を申請させ、間髪を入れず金融危機対応会議を招集してあさひ、大和の両行に公的資金を注入する――今年に入って金融界で囁かれてきたシナリオだが、金融庁は依然踏み切れないでいる。
まず朝日を破綻前に処理するのか、破綻後に処理するのか。破綻後なら包括移転と基金取り崩し、解約凍結の三点セットである。最大手の日本生命などは、包括移転で予定利率を大幅に切り下げて引き取ることしか受け入れそうにない。これは3百万人以上の朝日契約者に多大の犠牲を強いる。
破綻前処理なら、救済合併してもらうしかない。朝日が米系の大手保険数社と「お見合い」をした形跡もある。が、「外資はダメだ」――柳沢金融相、野中広務元幹事長らが「青目への売却」に拒絶反応を見せている。ここでも旧長銀をリップルウッドに譲渡した際の「瑕疵担保」がトラウマになっている。時間とともに劣化する生保の性格上、将来はどこかが穴埋めしなければならない。再保険にかければレートが高いし、政府が負担するか業界が負担するかで紛糾するのを恐れ、政治も行政も腰が引けているのが実情だ。
だが、時計の針は容赦ない。保険契約と資産内容の劣化という究極のモラルハザードは、運命を決めかねている間もどんどん進行している。
朝日は解約資金を手当てするために売却できる優良資産から次々と売り飛ばしている。富士通など古河グループ各社の株が売り叩かれているのはこの思惑からだが、朝日生命のポートフォリオには売るに売れない外国投信などが残る。資産・負債ともに劣化した後でこと切れても、負担するのが残された契約者なのは目に見えている。
ダブル「朝日」共倒れになすすべもない日本に、いつ朝日は昇るのか。

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