「結局のところ、“総合デフレ対策”と言ってみたところで、その中身は単なる株価対策の域を出ていない。株価下落を“資産デフレ”ととらえるならば、なるほどこの程度の内容でも“デフレ対策”の看板を掲げられるのだろうが…」
大手都銀首脳がこう言ってみせる。
とはいうものの、2月27日に発表となった“総合デフレ対策”の株式マーケットに対するインパクトは絶大だった、と見ていいだろう。
「とくに“外国人”が猛烈な買い戻しに動いていると見ていいでしょう。たとえば2月28日の寄付段階における主要外国証券12社を経由した注文動向を見ても、ウリ1910万株に対してカイ5670万株となっているのが実情です。つまり差し引き3760万株の“カイ”となったわけですが、これは昨年5月以来の高水準なんです…」(大手銀行株式運用担当責任者)
こうした“動き”を見ても、まさに“総合デフレ対策”に盛り込まれた「空売り規制の強化」が功を奏した格好となったのである。
「政府−とくに財務省と金融庁は、3月末の株価水準を何が何でもTOPIX(東証株価指数)ベースで、1023ポイントを若干でも上回る水準にまでもっていきたいようだ」(大手証券会社幹部)
このコメントに登場する“TOPIX1023ポイント”というラインは、昨年9月末時点の水準だ。財務省および金融庁サイドとしては、多くの企業が決算期を迎える3月末時点でこのラインを是が非でもキープさせたい、という意向を持っていると見ていいだろう。
2月28日の大引け時点のTOPIXは1013.80ポイント(前日比6.62ポイント増)。政府が目標とするラインまで、あと約10ポイントのところまで戻してきたのが実情だ。
「まさに金融庁はなりふりかまわず“株価対策”に動いています。金融庁は、“貸し株”という形で“外資”に株を供与していると目される生保各社に対して、強烈なプレッシャーをかけていますが、それもその一端です。“外資”としては買い戻しをかける前にもう一段売り崩したいところなのでしょうが、その売るべき株の供給が事実上ストップしているのです」(大手証券会社役員)
そもそも“外資”は、昨年9月11日の米国同時多発テロを1つの契機に、日本の株式マーケットに対して大規模な売り攻勢を仕掛けてきた。そしてその最大のピークが、昨年9月17日だったのである。
「この“売り攻勢”を仕掛けるにあたっての最大のテーマに選ばれたのが、金融危機だったのです。そしてこの“9・17”以降、あらゆる形で金融危機が“外資”の手で演出されていったのです。そうした状況の中で“外資”がフルに利用したのが、いわゆる“大手30社問題”だった、といえるでしょう。結局、“外資”のこうした策略は金融庁の対応のマズさも手伝って、ものの見事に成功したのです」(大手都銀首脳)
野村証券の調べによれば、2月末時点における信用売り残の上位5社は以下の通りになっている。
(1)みずほホールディングス(2)UFJ(3)三井住友銀行(4)NKK(5)松下電産
ちなみに第6位は、大和銀ホールディングスだ。
「つまり、銀行株が集中して狙われた、とみて間違いありません。財務省・金融庁連合軍は、2月末ぎりぎりになってようやく反転攻勢に打って出た、というところです」(大手都銀首脳)
果たして、3月末までに「TOPIX1023ポイント」の回復はなるのだろうか。
2002/3/1