日銀がさらなる金融緩和を行った。具体的には、年度末の資金需要に応じて10兆〜15兆円を上回る流動性を供給するとともに、長期国債の買い切りオペを月8000億円から1兆円に増額するというものだ。
これは、当面の金融危機を回避する上では有益であろうが、現在の経済危機の根底にあるデフレの問題に対処したものとはいえない。そもそも、前日に日銀総裁が効果を否定した長期国債の買い切りオペを翌日アナウンスされても、市場はしらけるばかりだ。しかも、ご丁寧に、これだけ緩和しても政府による適切な措置がないとデフレは止まらないと声明で述べるに至っては、何をかいわんやだ。
要するに日銀は、自分でも効果がないと思っている政策を市場や政府から押し付けられて、いやいや、しかも効果がないといいつつ採り、案の定効果がないと、自分の信認が増すと考えているようだ。これこそ最悪の中央銀行だ。
なぜなら、かつてヒックスがいったように、中央銀行がわずかに公定歩合を動かしただけで一定の効果を持つのは、効果が出るまで何度でも公定歩合を操作するぞという中央銀行の決意が示されているからなのだ。今の日銀のように、効果も期待せず、目標が実現するまでやるという決意もない中央銀行の金融政策に、誰がついていくだろうか。
もはや、日銀の信認と金融政策の効果を回復するためには、政策委員会のメンバー全員を入れ替え、年率2%程度の物価安定目標を設定するしかない。それも、デフレで経済が破壊される前に実行する必要があり、時間はあまり残されていない。 (知命)
[毎日新聞2月28日] ( 2002-02-28-23:34 )