外国債券を主要投資対象とする投資信託に、個人を中心にした資金が流入している。
複数の投信関係者によると、外国債券型投信は、為替変動リスクを加味したとしても、国内債券で運用する場合に比べて、優位な利回りが期待できる。安定した収益分配が、ペイオフ解禁を控え、預貯金などからの資金移し替えを進める投資家の購入意欲を誘っている、という。
1月の純資産動向調査(純資産10億円以上、運用期間3年以上を対象)では、純資産増加額上位10ファンドのうち、外国債券型投信が過半を占めた。
国際投信が運用する「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は、経済開発協力機構(OECD)加盟国のうち、格付けがA格以上の信用力の高い国のソブリン債券に分散投資している。純資産総額が昨年12月28日に5000億円の大台を突破。年明けには、野村アセットマネジメントの「ノムラ日本株戦略ファンド」を抜いて、運用中の追加型株式投信でトップに踊り出た。27日現在の純資産残高が5644億円で、この2カ月間だけでも600億円余り増加したことになる。
複数の投信関係者は、外国債券型投信が人気化している要因として、毎期安定した収益分配に加えて、国際分散投資の投資手法が個人にも浸透しつつあることを指摘している。
「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の場合、過去1年間の分配金合計は480円、分配金再投資後の基準騰落率は、14.9%(課税前)にも上る。「超低金利の継続とペイオフを間近に控えて、国際分散投資の一つの投資先として、預貯金から振り分けて購入するケースが見られる」(国際投信の関係者)という。
また、ニッセイアセットマネジメントの「ニッセイ/パトナム・インカムオープン」は米国債、モーゲージ証券、ハイイールド債などの米ドル建て債券に投資。債券からの利息収入を分配金の原資に充当して、年4回の収益分配を行っている。98年7月の設定以来、分配金の総額は1330円で、分配金利回り(課税前)で年率5%前後になる計算だ。ニッセイアセットでは、「資金流入の7〜8割が銀行窓販経由。ペイオフ解禁を受けて、資金を単に銀行に預けておくだけではなく、利息を獲得するために投資する意識が根付き始めている。安定したインカムを生む商品として、年金の補完的な意味合いで買われている投資家が多い」(関係者)と話す。
複数の投信関係者によると、毎期安定して分配を行うファンドに対する投資家のニーズが強まっており、ペイオフ解禁を目前に控えた3月は、外国債券型投信の設定が相次ぐ見通し。
ドイチェ・アセット・マネジメントが3月1日に設定する「ドイチェ欧州債券ファンド」は、収益分配を年4回としたほか、日本投信が3月26日に設定する「ワールド・ソブリンインカム」は、毎月25日に決算を行い分配する毎月決算型とした。「ペイオフ解禁を睨んで、預貯金の受け皿商品になるように企画した。国内債券では、安定したインカム収入を得るのが難しいため、主要投資対象を外国債券(ソブリン債)にした」(日本投信の関係者)という。
また、国際投信では、新たに「グローバル・ソブリン・オープン」の1年決算型を3月5日に設定するほか、「同(毎月決算型)」に対する投資家ニーズに対応するため、取扱販売会社に3月9日付けで9社を加える予定で、証券64社、登録金融機関(銀行、生保など)39社、直販1社の計104社の幅広い販売ネットワークを構築する。
参考]
◎1月の資金動向調査
・純資産増加額の上位10ファンド
順位 ファンド名 純資産額(前月比増加額)
(委託会社) 単位:億円
1 グローバル・ソブリン(毎月) 5290.02(272.74)
(国際)
2 ユーロ・ランド・ソブリン・インカム 1060.14(174.34)
(国際)
3 JFグレーター・チャイナ・オープン 568.60(128.74)
(JPモルガンF)
4 ニッセイ/パトナム・インカムオープン 1411.05( 89.74)
(ニッセイAM)
5 米国優先証券オープン 328.90( 41.73)
(野村)
6 UFJパートナーズ チャイナオープン 72.23( 24.84)
(UFJパートナーズ)
7 ノムラ・ボンド・インカム・オープン 644.37( 22.78)
(野村)
8 グローバル・エマージング・ボンド・オープン 391.66( 20.45)
(UFJパートナーズ)
9 マーキュリー・ゴールド・メタル・オープン(B)125.88( 19.22)
(メリルリンチ)
10 夢楽章 日経平均オープン 220.96( 15.11)
(UFJパートナーズ)
※ データ提供:リッパー(Lipper, a Reuters company)