ブッシュ米大統領が訪日前に、小泉純一郎首相に対して出した極秘の親書の内容が明らかになった。朝日新聞社が入手した親書のコピーによれば、首脳会談を前に、日本の不良債権処理の遅れに強い懸念を示し、市場に売却する形での抜本処理や企業の再生を強く促している。不良債権処理の促進も含めた日本政府の「デフレ対策」が27日に発表されたが、米国が求めた姿にはほど遠く、今後の日米関係にも影響しそうだ。
ブッシュ大統領の親書は、1月17日付で出された。日米政府でともに極秘扱いになっている書簡だ。2ページにわたる書簡の中で、同時多発テロ後の日本の貢献やアフガニスタン復興会議について簡単に触れられているほかは、ほとんど経済問題をめぐる問題提起にあてられている。
日本が、技術力や人材の点で優位性があるにもかかわらず、十分に利用されていないことを指摘。それを効率的な企業部門に移動させることが、日本が成長力を取り戻すカギだという認識を示している。
そのために、銀行の不良債権や、その裏側にある企業の不稼働資産(不採算な事業や店舗など)の解決を訴えている。それらが「早期に市場に売却されていないことに、強い懸念を感じる」と言明している。
「もし迅速に行動すれば、市場や米国の友人などに対し、日本が本当に構造改革や景気回復への道筋をたどろうとしているシグナル(合図)になる」とも書き、逆に迅速に行動しない場合、市場や米国が、日本を見放しかねないことを示唆している。
また、日本や米国の経済が回復することが世界経済にとって必要なことだと指摘。日本経済が今のような状態だと、世界やアジア地域で日本がリーダーシップをとりにくくなるとの懸念も示している。
ブッシュ大統領と小泉首相の首脳会談は2月18日、東京都内で行われた。終了後の共同記者会見で大統領は「首相の指導力、戦略、戦略を実施しようという決意を信頼する」と述べ、「小泉改革」を全面的に支持する姿勢を打ち出していた。
ただ、ブッシュ政権は首脳会談の前から、具体的な経済課題の懸念があっても「大統領は個人的に話す」(ライス大統領補佐官)と表明しており、首脳会談の表面的な成功は、最初から決まっていた。
実際には、訪日を前に米側は、経済回復に向けての具体的な処方せんを書簡にして提示していたことが判明した。(15:17)