政府が27日夜に正式発表する“総合デフレ対策”についての概要が報じられたが、外為市場では目立った反応はみられず、ドル/円は134円半ばを中心にやや円安水準でのもみあいが続いている。株式市場では、カラ売り規制強化の影響が大きく、実体を伴った上昇ではないとの見方が多いものの、株価が大きく上昇、“トリプル安”的な要素が薄まったことから、短期的には円を売り込みにくい地合いになった、との見方が示されている。ただ、問題先送りの感が否めないとする声が多いなか、根本的に円は買えないとして、中長期的な円安基調の継続を見込む声が圧倒的に多い。
きょう政府が最終的に発表を行う“総合デフレ対策”の骨格が前日から伝えられているが、27日の外為市場での受け止め方は、「予想の範囲内で何らサプライズな内容は盛り込まれていない」(都銀)と、きわめて冷ややかなものとなった。しかし、特段、円が売り込まれるという展開にもならず、前日の海外市場で既に水準を切り上げてしまったこともあり、134円半ばを挟みもみあう展開となった。
こうした反応について、東京三菱銀行・為替資金部チーフアナリストの深谷幸司氏は、「きょう正式に発表される“総合デフレ対策”の政府最終案を見る限り、予想された通りの内容でもあり、特段のサプライズはない。それほど期待された内容であった訳でもないことから、大きく失望感を誘うということにはならない」と指摘する。
このように、期待度が低かった分、失望も薄いとの見方が示されているが、日経平均が前日比370円46銭もの大幅高で引ける展開となったこともあり、日中は円安に振れることもなく、やや円が買われる場面もみられていた。
市場では、短期的には“トリプル安”的な動きが薄れたことから、円を売り込みにくいとしながらも、中長期的には円安基調の継続を見込む向きが多い。また、具体的なコアレンジとして、133円〜135円半ばがイメージされている。
トロント・ドミニオン銀行・為替資金部部長の高山和夫氏からは、「為替については、ある程度織り込んでおり、材料難のなか、円売りしづらい。円高にならないにしても、さらなる円売りのモメンタムは低い。ただ、日銀による金融緩和を背景に、円安という底流は変わらない」との見方が示されている。
また、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド・営業部長の花生浩介氏は、目先は、「米国政府が、デフレ対策をもって危機を乗り切ろうとする日本の政策を容認しているような節がある。米国サイドが日本を突き放すような格好になれば、円を売り込みやすいのだが、そうした状況でもなく、海外勢が円売りで攻め切れない部分もあるだろう」としているものの、「デフレ対策も、極論すれば株のカラ売り規制だけとも評価でき、ポジティブには受け止められない。スピードの問題だろうが、中長期的にみて円安基調は変わらないとみている」と予想。コアレンジを133円〜135円程度とし、上抜けた際には137円付近まで視野に入る、と予想している。
同様に、東京三菱銀行の深谷氏も、「“デフレ対策”とは、そもそも即効性があるものでもなく、円を積極的に買うという状況にならないが、株価対策の意味合いが強いなか、株式市場が好感することは期待され、そういった意味からは、円を売りにくくはなったと言えるだろう」としながらも、「日本の置かれた厳しい経済情勢を根本的に好転させることは難しく、中長期的に円売り材料が残ると言っていい」と述べ、目先は133円〜135.50円程度のレンジ内で推移が続くと予想している。
なお、中長期的に円安を見込む相場観は、通貨オプション市場で需給の偏りを示すリスク・リバーサルのスプレッドに反映されている。
ある外銀オプションディーラーは、「中長期的に一段の円安を見込み、デルタ値の低い円・プットオプションを仕込むような動きが、このところ継続的に観測されている。こうした取引を背景に、6カ月物のリバーサルのスプレッドは、0.8%ほど円・プット高で推移するなど、非常に堅調に推移、市場の相場観を反映していると言えるだろう」と述べている。なお、2カ月物では同スプレッドが0.6%の円・プット高で推移しており、先に行くほど円安を見込んだ格好になっている。