政府はきょう27日夕に開く経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)で、デフレ対策を決定する。最大のテーマは不良債権処理や金融システムの安定だが、経済界の期待とは裏腹に新味に乏しいものばかり。おまけに、銀行への公的資金再注入や物価対策をめぐって政府と日銀の間に大きなズレも生じており、政府内からは「効果を期待するのは間違い」(首相官邸筋)との声さえ漏れてくる。ニッポン経済はいよいよ3月危機のドロ沼へとハマりこんでいくのか。
デフレ対策は大きく分けて、(1)不良債権処理の促進(2)金融システムの安定(3)市場対策(4)貸し渋り対策等−の4項目からなる。この中でも、なかば“国際公約”になっている不良債権処理と金融システムの安定は、内外から特に注目されたテーマだ。
しかし、打ち出される不良債権処理策の中身と言えば、現在、大手銀行に実施している特別検査の結果を公表するとともに、問題企業を再建するのか法的整理に移行するのか、銀行に速やかな対応を要請する、といった新味のないもの。肝心の金融界の評判は予想通り芳しくない。
「最近、ミサワホームや大京、藤和不動産とUFJ銀行がメーンバンクになっている企業の金融支援が立て続けに飛び出してきた。これは現在行われている2巡目の特別検査を受けて、金融当局主導でとられた措置。UFJの次は富士銀行が抱えるゼネコン群が焦点になるだろうが、オーバーカンパニー(企業の数が多すぎること)の状況は変わらず、問題の先送りととられても仕方ない」(金融アナリスト)というわけだ。
不良債権処理策には、銀行の不良債権を買い取る整理回収機構(RCC)の円滑な活用も含まれるが、「『債権買取推進本部』の設置といった“看板”だけは立派だが、中身が伴っていない」(大手銀行幹部)というのが実情だ。
また、不良債権処理は銀行の体力を奪うことになるため、デフレ対策では金融システムの安定もセットで重要テーマになる。ところが、この分野では政府と日銀のズレが目立っている。「まず公的資金を注入した上で金融政策を実施すべき」との立場をとる日銀に対し、政府は「公的資金注入は必要ない。もう一段の金融緩和策を実施すべき」との立場で、両者の間には深く大きな“溝”が生じているのだ。
さらに、物価が下がって経済活動が停滞するデフレを克服するため、政府内には「一定の物価上昇を目標にした金融政策も必要では」との声が出ているが、日銀は「そのようなものは不適当」と聞く耳を持たない。
このほか、市場対策にしても「銀行等保有株式取得機構の買い取り対象の拡大」が盛り込まれるが、「持ち合い解消売りによる株価下落をなんとか防ぐための取り繕いの策」(証券アナリスト)との評がもっぱら。
発表前から体たらくぶりを露呈しているデフレ対策。政府内から早くも対策の「第2弾」が必要との声も出ており、「ニッポン経済は荒波にもまれる木の葉のような状態に陥っていく」(同)可能性が高まっている。