複数の投信関係者によると、MMF(マネー・マネジメント・ファンド)の利回りが低下傾向にある。投資信託協会がMMFの新ルールを策定したことを受けて、投信各社が運用資産の見直しを行っているためとみられている。ただ、一気にポートフォリオを組み替えると、再び元本割れを招く可能性もあり、各社とも神経
質な対応を迫られている。
昨年11月にMMFの元本割れが相次いだことを受けて、投信協会は、MMFの安定性を高めるための自主ルールを策定した。運用面では、組み入れ資産を残存期間や格付けなどを細かく制限したほか、時価評価をしなくていい償却原価法の評価対象となる満期保有目的債券や、残存1年以内の債券の運用規定を厳しくした。投信協会では、移行時期について具体的に明示していないものの、「可能な運用会社から直ちに対応することとする」(金子義昭副会長)として、運用会社に迅速な新ルールへの移行を求めている。
主要投信会社が運用するMMF利回り(2月19日〜25日の平均実績利回り、年換算)は、野村アセットが0.024%、大和投信が0.130%、国際投信が0.131%、新光投信(旧太陽)が0.057%、新光投信(旧新和光)が0.031%−−などとなった。投信協会が自主ルールを発表した1月18日時点に比べ、いずれも0.008%〜0.177%程度低下している。リスクとリターンの相関関係から、「安定性を重視する新ルール下で運用すれば、利回り低下は避けられない」(ある投信関係者)という。
野村アセットでは、新ルールに対して即座に対応、1月23日には、新ルールに適合しない銀行劣後債約2900億円のうち、1959億円をファンドから自己資金で買い取ることを発表。さらに、野村アセット関係者によると、残り900億円分についても、償還を迎えるなどして銀行劣後債の残高をゼロにし、2月13日までに、MMFを新ルールに適合させた。「利回り低下は、新ルールに基づいた運用によるもの」(同社関係者)という。
複数の投信関係者によると、新ルール適合に向けた運用資産の見直し作業は、投信各社で継続的に行われている。しかし、新ルールに適合しない債券の中には、銀行や商社、建設といった信用面で不安を抱えている業種の債券やBBB格の債券といった、流動性が乏しい債券も少なくない。そのため、「保有債券を無理に売却をしようとすれば、売却損が発生。少しでも損を被ると、低金利であるため、すぐに元本割れを起こす可能性もある。
新ルールへの適合は、まさに綱渡りの作業」(ある運用担当者)との声が聞かれる。
[参考]
◎MMFの利回り
運用会社 年換算利回り
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
野村 0.024%
大和 0.130%
新光(旧太陽) 0.057%
新光(旧新和光) 0.031%
三洋 0.015%
第一勧業 0.067%
大同ライフ 0.171%
国際 0.131%
明治ドレスナー 0.005%
あさひ東京 0.041%
インベスコ 0.005%
農中全共連 0.067%
トヨタ 0.067%
三菱信 0.020%
野村(確定拠出年金向け)0.010%
(備考)・2月19日〜25日の平均実績利回り
・元本割れファンドを除く