ブッシュ政権の一国主義(ユニラテラリズム)はエスカレートする一方である。冬季オリンピックにも、それに通じる米国中心主義が随所に表れていた。1936年のベルリン五輪を、ナチスの宣伝と国威発揚に利用したヒトラーになぞらえるのは明らかに不当だが、そうした連想が浮かぶのもあながち見当違いとは言い切れないと思う。
ITバブルとテロの後遺症にもかかわらず、米国経済の相対的優位は不変。国際政治・軍事面での超大国としての圧倒的強さに至っては、あらためて強調するまでもない。アフガンでの軍事作戦が成功を収めたことで、ブッシュ政権は圧倒的な人気を背景に一段と自信を強めている。たとえば米国こそ善であり正義の体現者、それに従わぬ者はすべて悪であり邪であるとする単純な二分法(ダイコトミー)の論法にはいささか辟易(へきえき)せざるを得ない。
また、強いドルは政治、経済両面の国益にかなうがゆえに、それと裏腹の円安は容認するとの姿勢も、同様の文脈で捕らえられる。だとすると秋の中間選挙を乗り切れば、すでに米国内の一部で唱えられている第2のプラザ合意(ドル高是正)に向け大きく舵(かじ)を切ることもあり得ると考えておく必要があろう。
過日のブッシュ来訪時に、小泉首相は、問題の「悪の枢軸」発言を、断固テロと戦う決意の表明として受け入れる意向を表明した。これは程度の差こそあれ米国との間に一定の距離を置く西欧諸国の立場とはひと味ちがう。むろん同じ同盟国といっても、国家連合的基盤を有し、その象徴であるユーロを擁するEUとは同日に論じ得ない。しかし、わが国が自主的な対米外交を打ち出す余地はあるはずだ。また将来ユーロがドルの対抗馬に育てば、いい意味での米欧間の緊張関係が生まれるであろう。 (幸兵衛)
[毎日新聞2月26日] ( 2002-02-26-20:56 )