金融庁は26日、ドイツ証券、日興ソロモン証券に業務改善命令、クレディ・リヨネ証券、ベア−スターンズ証券に売買業務停止命令を出したと発表した。いずれも日本株売買におけるカラ売り違反が発覚したため。
ある外資系運用機関の運用担当者は「かなりの人数の金融庁検査官が外資系証券等に乗り込み、伝票、電話通話記録などを細かくチェックし、法令違反を血眼になって探している。少しでもおかしなことがあれば(業務停止処分)など厳しい処置に動くらしい。売りで稼いできたトレーダー、ディーラーなどは戦々恐々としている」と話している。一方で「特に前週から公的資金と見られる買いが値がさ優良株に継続的に入っている」(中堅証券情報担当者)とも言われる。株価は基本的に企業価値で決まるものだが、売りを出しにくくさせ、買いを入れれば株価の需給は良くなる。この日は明日発表される総合デフレ対策の内容が失望されるとの読みから日経平均は93円安となったが、「売り方へのプレッシャーは強く、大きく崩れるような動きは考えにくい」(同)との見方を引き出していた。
この日金融庁が証券4社に対し、カラ売り規制違反に関する行政処分に踏み切った背景には「デフレ対策の内容に市場が失望することに備え、先んじて売り方を牽制した」と、推測する市場関係者もいる。行政処分と政策遂行がリンクするはずもないが、政策当局では株高をデフレ対策の重要な要素と見ていることは間違いないだろう。株価が上昇すれば、投資家が資産面の増加を享受して消費面の好影響につながるほか、保有株の含み損に苦しむ銀行の体力も回復する。「デフレは物価が下がり続ける現象を言うが、いつのまにかその”物価”は”株価”に置き換わったような印象を受ける」(中堅証券情報担当者)との声もある。
本来、デフレ対策の効果が浸透する中で株価も回復するのが自然な姿かも知れないが、効果を待つ余裕はなく、とにかく株価水準を引き上げてデフレ治療に役立てようとの国の考えが透けて見える。だが、苦しむ病人に対して鎮痛剤を打つだけでは治療にならない。株高に向けての国を挙げての総力戦を展開しつつ、しばしの安らぎを得る中で、不良債権の持続的発生と言う”病根”を取り除く努力が求められている。