「まさに“ダイエーホークス”は、ダイエー本社と銀行団にとって鬼門としか言いようがない。今回の一件で完全にアンタッチャブルな存在になってしまった」
ダイエーの主要取引銀行役員がこう言ってみせる。
去る2月22日、ダイエーの高木邦夫社長は、ダイエーホークスの高塚猛社長と会い、同球団の中内正代表取締役オーナーの辞任および、中内オーナーの保有する球団株40%の無償提供という2つの要請を全面的に撤回した。このことによって当面の間は、現行の体制でホークスの運営にあたることになった。
改めて説明するまでもなく、中内正氏はダイエーの創業者である中内功氏の二男にあたる人物だ。
「ダイエーはこの2月末にも、主要取引銀行による債権放棄を中心とする金融支援策を柱とした“新三カ年計画”を正式に策定し、発表することになっています。ダイエーおよび銀行団は、一連の作業の仕上げとして中内ファミリーに“けじめ”をつけることを求めたのです」(ダイエー関係者)
そもそも主要取引銀行(UFJ、三井住友、富士の各銀行)サイドは、
「いわゆる“福岡3点セット”(ホークス、ホテル、ドーム球場)は、中内功時代の事業多角化路線の象徴とでも言う存在だ。そしてこの“路線”が誤りであったことはもはや明らかだ。であるならば、そうした“負の遺産”のトップに、中内ファミリーの人間が君臨していること自体許されることではないだろう」というスタンスだった。
もともと主要取引銀行団は、当初から“福岡3点セット”については一括して売却することを主張していた。ところが、ホークスの地元・福岡からの強い反発を受け、ホークスの売却については撤回せざるを得ない状況に追い込まれたのである。
「こうした状況を受けて、ホテルとドーム球場については、証券化した上で売却するという計画をダイエー本社が打ち出してきたのです。もっとも、この“計画”については、現段階では完全に空中分解してしまったのが実情です」(主要取引銀行役員)
この“福岡3点セット”が抱えている有利子負債は、トータルで約1600億円にのぼる。
「その一方で、“福岡3点セット”の資産(大半が不動産)は、簿価ベースで約1300億円、時価ベースでは1000億円を切ってしまうでしょう。つまり実質的に600億円を超える債務超過状態にあるのです−」(主要取引銀行)
言ってみれば、“福岡3点セット”は、単体のビジネスとしてみた場合、完全に経営破(は)綻(たん)状態に陥っているのが実情だ。
「中内正氏は、『ダイエーの経営再建問題と、ホークスは関係ない−』というが、こうした状況をどのように考えるのか。その答えを出さずして単にポストにしがみつくというのであれば、完全に経営者として失格だ。今後ダイエー本社との間に大きなしこりを残すことになった“福岡3点セット”は、ダイエーグループのガンになった、と言えるだろう。合わせて高木社長の指導力にも疑問符が付けられることにもなってしまった」(主要取引銀行首脳)
さて、中内正氏にはどのような反論があるのだろうか。
2002/2/25