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「デフレ対策と言っても、結局は政府が日銀にツケ回しするだけだろう」（銀行系証券）―。政府が27日の経済財政諮問会議で取りまとめる予定のデフレ対策への期待は、金融市場ではすでにしぼんでいる。こうした中、市場関係者の中からある“秘策”を期待する声が高まっている。起死回生の策とは「金融市場を知り尽くしている日銀関係者を首相官邸に常駐させ、的外れな政策に待ったをかけさせろ」（同）というものだ。
●突然の官邸訪問で思惑に拍車
19日夜、速水優日銀総裁が首相官邸を訪れ、小泉純一郎首相に対し公的資金の早期注入を含めた金融システム安定化の必要性を進言した。突然の訪問劇に先立つ17日夜、塩川正十郎財務相、柳沢伯夫金融担当相、竹中平蔵経済財政担当相の経済3閣僚が、公的資金の注入を巡って激しい議論を展開。結局は「政府は公的資金を強制注入する考えは持っていない」（塩川財務相）との“政府見解”が示され、事実上、年度明けへの問題先送りが濃厚となった。
政府が策定を急ぐデフレ対策は、不良債権処理の促進や金融システムの安定などと並び、一段の金融緩和が中心的なテーマとなる。公的資金の年度内注入が事実上なくなった現状では、長期国債の買い入れ増や外債購入、インフレターゲティング導入など日銀への要求は高まるばかりだ。
速水総裁の官邸訪問は、デフレ対策取りまとめ後の28日に開催される日銀の金融政策決定会合を控え、「政府からの過大な緩和要求をかわすための先制攻撃」（関係筋）というのが真の狙いだったもようだ。政府の対応に業を煮やした市場関係者の間には「総裁をいちいち官邸に出向かせる前に、いっそのこと日銀スタッフを官邸に常駐させてはどうか」（別の銀行系証券）との意見すら出ている。
●実現の可能性は低いが
各種経済対策のたびに金融緩和の拡充を求められてきた日銀関係者が抱く政府、官邸への不信感は根強い。こうした市場の声に意を強くする関係者も少なくないのも事実。だが、「日銀法改正を経て、政府からの“独立性”が表向き高まったため、首相官邸にスタッフを置くというのは相当な無理がある」（中堅幹部）という分厚い壁もある。もとより「政治との交渉に長けた財務省・金融庁がスタッフ派遣を黙って見過ごしてくれるはずもない」（別の中堅幹部）ことも確かで、市場の思惑通りに事が進む可能性は極めて低い。
ただ「実体経済の改革なしで、需要は生まれてこない」と主張し続ける速水総裁の言葉は、「効果のない緩和要求を続ける政府・与党の無策を嘆く市場と、危機感を共有したもの」（外資系投信幹部）と言えるだろう。突飛とも言える思惑が飛び出した背景を、問題先送りを決めた政府関係者は真摯に受け止める必要があるのではないだろうか。
（相場 英雄）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。