トヨタ自動車は来年夏をめどに、水素を燃料にし究極のクリーンエネルギーとされる燃料電池を搭載した乗用車を、首都圏で先行発売する方針を固めた。首都圏で限定的に販売するのは、水素ガス供給ステーションの整備が進められているため。価格は一千万円程度に抑え、官公庁や大企業を中心に販売する。乗用車では世界初の商業化になる公算が大きい。
発売するのは、昨年夏から走行試験を続けている「FCHV−4」の改良型。多目的スポーツ車(SUV)の「クルーガーV」が原型になっている。
燃料の水素は、車内の高圧タンクに貯蔵する方式を採用。水素充てんに要する時間が五分と短く、一度の充てんで二百五十キロ以上を走行できるのが特徴。
大量生産ができないため、当初は十台程度の限定で販売する。開発費は一台当たり数億円ともいわれているが、普及への第一歩でもあり、あえて赤字価格で売る。
燃料電池車の普及をにらんで経済産業省は民間に委託し、首都圏でガソリンスタンド方式の水素供給ステーションを試験的に整備している。第一号は今年六月、横浜市鶴見区に完成する予定で、首都圏ではさらに来年までに五カ所程度が加わる計画になっている。燃料の充てんは、これらの施設で行ってもらうことにしている。
トヨタは、水素供給のビジネス化を狙うガス関連企業などとも情報交換しながら、燃料電池車の社会普及を模索する。
トヨタ幹部は「首都圏での限定発売に続き、地方でのインフラが整い次第、広く発売したい」としている。
燃料電池車は、水素と酸素の化学反応で生じる電気を燃料とし、水しか排出しない。ホンダが二〇〇三年、ダイムラークライスラーやフォード・モーターなど欧米勢が〇四年の発売を目指すなど、開発にしのぎを削っている。販売方法、価格などが明らかになったのは今回のトヨタが初めて。