企業の倒産は金曜に多い−−。こんな傾向があることが帝国データバンクのまとめで分かった。居酒屋、カラオケルームなどで楽しい金曜日を過ごす「すっかり週末モード」のサラリーマンがいる一方で、同じ金曜日に会社が倒産し目の前が真っ暗になるサラリーマンも少なくない。
帝国データバンクは、バブル崩壊後の91年以降に倒産した上場企業のうち法的申請以前に銀行取引停止になったり、倒産時にすでに上場廃止になったりしたものを除いた76社を対象に、法的申請日を調査した。
調査結果によると、76社のうち「金曜」に法的申請したのは17社で最も多く、次いで「木曜」が16社、「火曜」が13社、「水曜」が12社、「月曜」が9社、「日曜」が7社、「土曜」が2社の順となった。上位の「金曜」と「木曜」で調査対象全体の43.4%を占めており、週末に倒産する上場企業が多いことが分かる。
マイカル、第一ホテル、ライフも「金曜倒産」
また、証券市場の休場日(土、日、祭日)に法的申請を行った企業は10社で、平日に行ったのは66社だった。66社のうち休場日の前日(休前日)に申請した企業は22社で、申請日が休前日に多いと言える。さらに帝国データバンクによると、全体の4割以上の申請が毎月21日以降の下旬に集中しているという。
上場企業の倒産が週末近くの木、金曜や休前日に集中する背景には、上場企業の倒産が市場に与える影響が大きいことがある。そのため、企業側は市場への影響を極力小さくするために、法的申請の日を選んでいると言える。
「金曜の倒産」は、記憶に新しいところでは、東証1部上場の大手スーパー、マイカルが2001年9月14日の金曜に民事再生法を申請した。そのほか、金曜日に法的申請を行ったのは、第一ホテル(2000年5月26日の金曜)、ライフ(2000年5月29日の金曜)などがある。
22日の金曜にも、新日本製鉄系の合金鉄メーカー日本重化学工業(東証1部上場)が東京地裁に会社更生法の適用を申請した。
こうした上場企業は従業員数も多いため、失業、転職を余儀なくされた人も多い。マイカルの従業員数は5877人、名産品販売のフットワークエクスプレスは4258人、総合プラントメーカーの新潟鉄工所は2717人など、1000人以上の従業員を抱えて倒産するケースも増えている。
意図的な曜日選定には問題も
2001年度の倒産件数は2万件を超え戦後最悪水準に迫ると帝国データバンクではみている。3月期決算を控え倒産件数がさらに増える可能性は高い。市場への影響を意識した「金曜の倒産」も増えることが予想され、サラリーマンにとっては週末モードで浮かれてはいられない状況だ。
帝国データバンクは、法的申請日の選定が意図的に行われ過ぎると、情報漏洩の懸念や関係者のインサイダー取引の温床になりやすいなど、問題が発生する可能性もあると指摘する。そのうえで、上場企業の倒産がこれから本格化することは必至で、これらの企業に適時情報開示(タイムリー・ディスクロージャー)の徹底が一層求められると強調している。