法務省が会社更生法を半世紀ぶりに全面改正するのは、規定が硬直的で使い勝手が悪いうえ、本来、中小企業向けに創設された民事再生法に、大企業が流れるケースが目立ってきたためだ。更生法にはどんなメリットがあり、改正でどう変わるのか、を探った。【大高和雄】
●大人には大人の服
更生法と再生法の最大の違いは、担保をもつ債権者が再建計画に拘束されるかどうかだ。再生法は、担保権者は拘束されず、担保の会社資産を自由に競売できる。それでは再建できないので、会社側は担保権者と個別に交渉し、計画に協力してもらう必要がある。
これは、関係者が多く、権利関係が複雑な大企業には適さない。だから、大企業が民事再生法を活用するのは、「大人が無理して子供服を着るようなものだ」(経団連関係者)と言われる。
担保権を握る主力銀行の意向に反して再生法で押し切る難しさは、昨年のマイカル破たんが示した。第一勧銀の理解を得ずに再生法を申請したが、結局、更生法に乗り換えざるを得なかった。
更生法は、担保権者を拘束できるだけでなく、株主総会を開かなくても、増・減資や定款変更、合併などの組織変更が可能になるなど大企業向けのメリットが多い。
●居座りはダメ
再生法は、破たんを招いた経営者も、そのまま再建計画にあたることができる。「それが、大企業を含めて再生法に集中した原因の一つとみられる」(経済産業省)。
しかし、残留を許すのは、たとえば「優れた技術・技能を持つ社長がいないと会社が立ち行かない」という中小企業のための仕組みだ。居座りのために使うのでは、再建は失敗しかねない。実際、これまで再生法申請企業の約15%が、結局破産している。
更生法改正は、旧経営者を管財人に選べるよう明文化するが、「経営責任がない」ことが条件で、「居座り組」を認めないことは変わらない。
●価値あるうちに
有力企業約1000社を対象にした経済産業省のアンケートでは、更生法の欠点は「迅速性・効率性が不十分」が最も多かった。再建計画の遂行が遅れれば、それだけ企業の価値は落ちてしまうからだ。
そこで、改正案は、全国どこからでも、倒産専門部門がある東京、大阪の両地裁に申し立てできるようにし、裁判所の事前審査要件も緩和する。更生計画策定前の営業譲渡も認めたり、計画終結の早期化を促すのも、企業価値の維持、回復を図るための新しい手法だ。