雪印食品が22日解散を決め、牛肉の産地偽装に対する消費者、生産者の怒りが、売上高1000億円近い企業を「消滅」に追い込むことになった。会見した岩瀬弘士郎社長は「自力再建に向けいろんな手法を検討したが、結果としてどのケースでも事業は成り立たないとの結論に達した」と唇をかんだ。組織的とも言える犯罪行為の責任の重さと、引き起こした牛肉離れ、食品業界全体に向けられた不信感という経済・社会的影響はあまりに大きく、延命の余地はなかった。
吉田升三前社長が退き、経営陣を刷新した雪印食品は、工場統廃合や地域、事業ごとの独立採算性移行、売却などを検討してきた。偽装が明るみに出た食肉事業は切り捨てるが、主力のハム・ソーセージ事業を軸に企業存続は可能とみていた。
しかし、影響は食肉部門にとどまらず、ハム・ソーセージを含めて全製品の販売打ち切りが全国に広がった。売上高は事件前に比べ全体で85%減、事件が最初に発覚した関西地区は90%以上も減少した。現在も「日を追うごとに売り上げが落ちている」(岩瀬社長)のが現状で、どんな絵を描いても、自力再建の道は残されていなかった。
それでも、他社との提携や吸収合併、事業売却が選択肢としてあり得た。ただ、反社会的行為が次々明るみに出る企業のパートナーになる企業は現れなかった。親会社の雪印乳業も、自ら引き起こした一昨年の集団食中毒事件の後遺症で、手一杯だった。牛乳の販売が低迷する中、「食品」の事件で「乳業」の売上高も20%程度落ち込み、体力低下が再び深刻になっている。ブランドイメージ低下の原因である食品を抱え込むリスクは負えなかった。
解散の決断は、産地偽装が発覚してからわずか1カ月足らずだった。消費者や市場の信頼を裏切れば、上場企業に対しても、あっけなく「退場」のレッドカードが提示されることを示した意味は小さくない。企業の反社会的行為に対する監視の目は一段と厳しくなり、経営者全体が強く自戒を求められることになりそうだ。 【三島健二】