【ロンドン福本容子】
ドイツ最大のメディアグループで今年のサッカーワールドカップの国際放映権を握るキルヒ・グループが経営危機に直面している。業容拡大のツケで負債が膨張し、資金繰りが悪化。資金確保のためついに自動車レース、フォーミュラ1(F1)の放映・商業権を部分売却する方針を固めた。だが、負債総額は100億ユーロ(約1兆1500億円)以上ともいわれ、再建には時間がかかりそうだ。
キルシュ・グループはレオ・キルヒ氏(75)が率いるメディア帝国で、独主力テレビ局や独最大の大衆紙発行会社などを傘下に持つ。また、英BスカイBと共同で有料放送事業にも乗り出した。F1のテレビ放映権、商業権を一手に掌握するため、SLECの資本の58%を昨年約140億ドルで取得した。
だが200社以上の関連企業があるとみられるグループの財務内容は不透明で、実体はつかみにくい。有料テレビなど新事業を積極的に展開した結果、負債は雪だるま式に増大したものの、関連企業の中には外部監査を受けていないものもあり、正確な負債総額や資産内容は不明だ。
資金繰りの悪化に直面したことから、ついにグループビジネスの売却を迫られた。筆頭候補がF1放映・商業権の売却で、F1に参加している自動車メーカーが有力売却先と考えられている。ただ具体的交渉はこれからで、売却値が購入費を大きく下回るのは間違いなさそうだ。
一方、債権者にはドイツ銀行など独主要金融機関が名を連ねる。中でも最大の貸し手で融資総額が19億ユーロ(約2200億円)にものぼる地元バイエルン州の州立銀行は同州政府が直接経営に関与しており、キルヒグループの破たんは州財政や、ひいては今年の総選挙で首相候補とされるシュトイバー・バイエルン州首相の支持率にも影響する恐れがある。
[毎日新聞2月21日] ( 2002-02-21-19:46 )