21日に行われた10年国債(237回債)入札は低調との事前予想に反して無難な結果となった。落札価格は市場実勢水準に収まり、落札倍率も前回の1.6倍から2.0倍に上昇した。新発債のセカンダリー(流通市場)での売れ行きもまずまずで、決算期末の前でも10年債利回り1.5%台半ばでは投資家の需要が高まることが示された。市場では「10年国債利回り1.5%を挟んだレンジ相場の値固めの展開になる」(日興ソロモン・スミス・バーニー証券債券本部・佐野一彦チーフストラテジスト)との指摘が聞かれた。
この日の債券相場は午後に先物の買い戻し主導で急反発。先物高に引きずられる格好で、現物長期債も上昇して、10年物の236回債利回りは午前の 1.545%から1.490%まで大幅に低下(価格は上昇)している。
こうした相場上昇を追い風にして、新発237回債は入札後のセカンダリーでまずまずの売れ行きとなっている。業者間取引では、新発債の価格は99円78 銭(利回りは1.525%)程度と、平均落札価格100円4銭から63銭の手数料を除いた99円41銭を上回って推移しており、一時は99円86銭まで買われた。
一方、今回の10年国債入札が事前の市場予想で低調になるとの見方が多かった背景には、期末要因で都市銀行をはじめとする投資家の需要が減退するとみられていたことが挙げられていた。新発債の発行日は3月20日なので、購入しても今期中の金利収益には貢献しない。購入する投資家は3月期決算を特段意識しなくて済む一部の年金や投資信託。「今後の値上がり益が確実に期待できると判断した一部の投資家に限られる」(みずほ証券・根本文夫シニアクオンツアナリスト)とみられていた。
しかし、予想に反する形で10年債入札を無難に乗り切り、新発237回債利回りがセカンダリーで1.5%台前半に低下していることから、市場関係者の間では10年債利回りで1.5%台半ばは債券相場の下値という見方が広がっている。市場ではまた、「1.5%台後半から半ばでは値ごろ感からの押し目買いが着実に入る。突発的な悪材料が出ない限り、期末まで相場が大崩れすることはないだろう」(岡三証券・坂東明継シニアストラテジスト)との指摘も聞かれた。