ブッシュ大統領の訪日と、4月からのペイオフを控えて銀行の不良債権の処理問題が再び浮上している。小泉首相はかねて金融システムを守るためには万全を期すと宣言、公的資金を投入する前提として銀行の特別検査も指示していた。しかしいざ、となると足並みはそろわず、迷走状態になっている。
銀行業界は公的資金の投入は不要とし、与党も幹事長レベルではむしろRCCによる不良債権の簿価買い取りを推している。政府部内の意思も不統一である。日銀総裁が強く公的資金の投入を首相に進言したのは、大銀行の株価の急落が始まるなど、このままでは不測の事態も、とおもんぱかっての判断だろう。事実、3月末までの投入というなら、ぎりぎりのタイミングである。このように足並みが乱れているのは何なのだろうか。
危機に対する感じ方の違いもあろうが、戦術というより、戦略のレベルでの足並み不統一の問題ではないか。重要なのは起こり得る危機への「対症療法」なのか、不良債権の「後始末」の問題なのか。それとも日本経済の「ポテンシャルをとり戻す」ためなのか、である。不良債権の処理とデフレ対策を同時に、という不可能に近い課題を解くのなら、思い切った根本療法で、対症療法も兼ねる程の対策が必要だろう。現在預金保険機構には15兆円の資金枠が用意されているが、その程度では足りまい。再生の道を一足先に歩みだした韓国は円にして25兆円相当の公的資金を投入したともいう。
また、日本経済の再生、という目的なら、全体が一丸となって推進できるよう金融界が協力しやすいスキームにする必要もあるのではないか。またその前提として、これによって目指す新しい国づくりのイメージも、もっと明確に打ち出す必要がある。 (猷)