日銀は28日の政策委員会・金融政策決定会合で、一層の金融緩和に踏み切ることを検討する。長期国債の買い入れ額を現在の月8000億円から、1兆円にする案などが有力視されている。3月末に向け金融危機を回避するとともに、政府の本格的な景気対策への呼び水にしたい考えだ。円安による輸出回復のテコとして、自民党の一部などが求めている外債の購入などは、実施しない見通しだ。
日銀は昨年3月、金融機関が日銀に預ける当座預金残高を金融政策の目標とする量的緩和を導入した。その後、3度にわたり当座預金残高の目標額を引き上げ、昨年12月に現行の「10〜15兆円」に変更した。国債の買い入れも8000億円まで増額している。
この結果、現金と当座預金を合わせたベースマネーは1月に前年同月比23・4%と、石油ショック時の74年以来の伸びを示した。金融市場の資金は「じゃぶじゃぶの状況」といえる。しかし、企業は借入金の返済を優先し、設備投資には資金は回らない状況で、経済の活動状況を示すマネーサプライの伸びは前年同月比で3・6%と微増にとどまっている。
日銀は、財政の効果的な投入や不良債権の抜本処理を伴わなければ、金融緩和の効果は限定的との考えを鮮明にしている。しかし、3月末に向けて銀行株の下落や信用リスクの高まりなど金融不安が高まっているうえ、金融庁の特別検査で、銀行が不良債権を抜本処理すればデフレ圧力が高まる懸念がある。
このため日銀内部では何らかの対応が必要との判断も強まっている。決定会合では、長期国債の買い入れ増額案のほか、当座預金残高を15兆円以上とする案などが討議される見通しだ。 【藤好陽太郎】