日銀の速水優総裁は19日夕、首相官邸に小泉純一郎首相を訪ね、公的資金の投入などで金融システムの安定を急ぐべきだ、との持論を伝えた。政府高官は、この発言について否定しているが、28日の金融政策決定会合に向けて、政府や米国などから「金融緩和圧力」が高まっている状況の下で、「金融政策ばかりにシワ寄せされる日銀が反撃に出た」(市場関係者)との見方も出ている。
関係筋によると、速水総裁は「公的資金を含めた対応をしなければ、金融システムの安定を確保できない」と訴えたという。総裁はブッシュ米大統領のパーティーで、政府首脳に小泉首相と会談したい旨を伝え、単身で官邸に乗り込んだ。
福田康夫官房長官は20日午前の会見で、公的資金再投入論に弾みがつくことを警戒してか、「(話題は)金融情勢全般の話。特に公的資金の話はしていない」と否定。速水総裁の真意がどの程度伝わったかは不明だ。
政府のデフレ対策は、日銀に対する一層の金融緩和を求める一方で、財政出動にはまったく触れておらず、「景気にはプラスにならない」(外資系証券)との指摘も。金融不安への危機感に加え、こうした事情について総裁は直訴したかったのでは、との見方も出ている。
[毎日新聞2月20日] ( 2002-02-20-21:23 )