【ワシントン逸見義行】
全米製造業者協会(NAM)は20日、米政府のドル高政策で過去1年半の間に、製造業で少なくとも40万人の雇用が喪失し、国際競争力が急低下しているとの報告書をまとめた。「一層の円安はアジアで通貨切り下げ競争を起こす危険がある」と指摘、円安に歯止めをかけることの重要性を強調。製造業の競争力回復のため、ドル高を国際的に是正した「第2のプラザ合意」が必要になったと主張している。
報告書によると、製造業は過去1年半、ドル高の影響で雇用減のほか、輸出額が1150億ドル(約15兆3000億円)減少した。いずれも、今回の景気後退で雇用や輸出額が減少した分の約3分の1に達する。
97年以来のドル高政策で、ドルは総合的にみて他通貨を30%も上昇したと分析。特に、ドル高の影響を大きく受けた業界として、紙、繊維、自動車の三つを挙げた。
日本に対しては「景気回復は経済構造改革や規制緩和を通じて達成すべきで、円安誘導に依存しても効果はない」と指摘し、「円以上に深刻なのはユーロやカナダドルに対してドルが上昇したことだ」と分析した。
国内総生産に占める輸出入額の比率は、プラザ合意が成立した85年に17%だったのに対し、現在は25%に達している。このため「ドル高の悪影響は、プラザ合意時代よりもっと深刻」と指摘し、「第2のプラザ合意」でドル高是正を実現するよう呼びかけた。
ブッシュ政権は「ドル高への懸念に共感は感じない」(オニール財務長官)と、現段階では為替政策を変更する考えがない。しかし、NAMがドル高是正を目指し、米政府と全面対決も辞さない強硬姿勢を示したことで、秋の中間選挙をにらんで政治問題化する懸念も出てきた。
[毎日新聞2月20日] ( 2002-02-20-19:43 )