米カリフォルニア州が2003年から実施するゼロエミッションビ―クル(ZEV9)―。これがすべての環境適合車の規制の枠組みを決めるデファクトスタンダードとなる勢いだ。米国自身は、年初にブッシュ大統領が表明したように、基本的には燃料電池車を先頭にした対応を優先しそう。そこで有力な株価材料に浮上してきたのが、燃料電池自動車に水素を充填する水素ステーション。ガソリンスタンドのように水素スタンドが普及すれば、燃料電池の導入は一気に進むことになるだけに、期待が集まる。水素ステーションのなかでも、あらゆるシステムに共通なのが、水素を貯蔵するための簡単で安価な水素吸蔵合金の開発である。水素燃料を最も効率的に蓄えることができる材料が水素吸蔵合金だけに、その行方は環境適合車の将来を占う試金石となりそうだ。
●問題は効率的な燃料水素供給の不可
燃料電池は、水素を燃料に空気との化学反応で電気を起こして利用するとともに、大気汚染はゼロの仕組みをもつ。従来使われてきたあらゆるエンジンに比べて、最もエネルギー利用効率が優れていることは言うまでもない。
原子力のように厄介な残渣(さ)物も発生しないだけに、理想のエネルギーと言われるのは当然のことであろう。しかし、燃料電池を実際に運用するためには、効率的な燃料水素の供給システムの構築が大きな課題になっている。ほとんどの報道で見落とされているのは、どのように効率的な燃料水素が供給できるのか―ということである。
水素は水から電気分解によって得るほか、石油や灯油から分解して水素得る方法、さらにはバイオマス、天然ガスなども検討されている。しかし、いずれの方法であるにせよ、最終的には造った水素は一時的でも長期でも、貯蔵する必要には迫られる。
●未確立分野だけに期待も大きい
水素は、窒素やヘリウムなどと並ぶ極低温物質。それだけに安定して長期に貯蔵する方法は、まだ未確立の分野だ。しかし、すでに工業化されている水素吸蔵合金を使えば、非常に手軽に大量の水素を蓄えることができる。大阪に先週開設されたわが国初の水素ステーションには、日本重化学工業<5562>製の水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵システムが採用された。今後、日本のみならず世界中での採用が進むことが期待できるだけに、大きなインパクトをもたらしそうだ。
(伴有 亮太郎)