「世界がもし100人の村だったら」という小さな本がベストセラーになっている。インターネットで世界中駆け回っているメールをマガジンハウスが出版したもので「ネット上の民話」と呼ばれているとか。
パラパラとめくっている内ギクッとするフレーズにぶち当たった。
「すべての富のうち6人が59%をもっていて、みんなアメリカ合衆国の人です。74人が39%を、20人がたったの2%を分けあっています」
よく議論になっている「富の偏在」「所得の二極分化」を表したものだ。世界を100人に縮めて表現されると本質が良く見えてくる。
こうした「富の偏在」は昔からの問題には違いないが、拍車がかかったのは1980年代からである。アメリカの経済学界で市場原理を重視する学説が勢いづき、レーガン大統領とサッチャー英首相が所得税の累進税率を緩和し、規制を撤廃したのがきっかけとなった。自由な市場での競争を促進することが、経済の効率を高め、消費者利益にもつながる――とするこの考え方は、いまや「グローバル・スタンダード」ともてはやされている。
確かに、アメリカの経済は金融、航空、通信など規制が撤廃された分野を中心に活性化した。しかし、激しい競争の結果、「独り勝ち」現象が起こり、富の偏在が強まったことも間違いない。
そしていま「富の偏在」に危機意識を抱く多くのNPO(非営利組織)がサミットやWTO(世界貿易機関)などの国際会議に反グローバリズムの旗を立てて抗議に押し寄せている。
ブッシュ大統領と小泉首相が本当に話し合うべきことはこの問題ではないのか。 (邦)
[毎日新聞2月19日] ( 2002-02-19-23:31 )