ついに、先進国で単独最下位の格付けとなりそうな日本国債。日本財政への不信感から国債価格はすでに下落基調(長期金利は上昇)を来しているが、格下げの影響で債券安が進めば、国債をたっぷりと買い込んでいる銀行の財務を直撃。評価損は銀行全体で1兆円を超すことが懸念される。平均株価1万円割れの水準で、大手銀行だけで5兆円規模の含み損を抱えているとされるが、3月決算に向け、新たな危機が現実のものとなってきた。
米格付け会社ムーディーズの指標では、日本国債は現時点の「Aa3」でもイタリアと並んで先進国最下位だが、一段階格下げならチリ、チェコ、ハンガリーと同格に。さらに、2段階下げならギリシャ、南アフリカと並ぶ水準にとなり、アジアの中でも台湾や香港以下となってしまうのだ。
市場はすでにこの事態を織り込みつつあり、1.4%前後で安定していた長期金利の指標となる10年物新発国債の利回りが今月に入って急上昇して、1.5%を突破。さらに「1.7−1.8%もありうる」(外資系証券エコノミスト)との見方も出ている。
こうした、長期金利上昇(国債価格の下落)の打撃をモロに受けるのが、国債をたっぷり買い込んでいる銀行だ。
日銀はこれまでの金融緩和で銀行にジャブジャブと資金を提供してきたが、銀行は“危ない企業”には貸したくないし、優良企業は借りてくれない。
さらに、株式市場が低迷していることもあり、その資金をデフォルト(債務不履行)リスクがきわめて小さく、低金利で“高値安定”していた日本国債につぎ込んでいたのだ。
全国銀行ベースで30兆円前後で推移していた国債保有残高は、平成11年ごろから急増、13年末時点では、67兆円にまで達している。
長期金利が0.1%上昇すれば、4大銀行グループだけでみても、保有債券の評価損益は、1グループあたり、最大200億円程度悪化するとの試算もある。さらに、銀行全体でみると、0.2%の金利上昇で、評価損益は1兆円悪化するとみられているのだ。
ブッシュ米大統領の来日(17日)直前という、米国側にとって絶妙(日本にとっては最悪)のタイミングで発表された国債格下げ検討。日本政府も週内にもデフレ総合対策の概要をまとめることになった。
そこでは、銀行への公的資金注入や不良債権処理、一段の金融緩和など、いわば銀行救済策が盛り込まれることが予想されるが、こうしたデフレ阻止策には追加的な財政出動が避けられないところ。
だがそうなれば、さらに財政は悪化し、国債の信用リスクは増大。銀行を救うはずの対策が、日本経済の命取りとなる恐れさえあるのだ。
今回の格下げ方針について福田康夫官房長官は「(日本の)底力を知らない」と不満をあらわにした。
確かに日本は世界最大の債権国であり、1400兆円の個人資産やハイテク技術などは依然として世界最高水準を誇っているのは事実。問題はむしろ、行き当たりばったりの小泉政権の経済政策にある。今こそ小泉政権は「底力」を見せなければいけないのだが…。