経営再建中の準大手ゼネコン、フジタ<1806>が来年4月にも三井建設<1821>、住友建設<1823>とともに経営統合をすることを発表、不良再建処理の最大の目玉であったゼネコン問題に一応の形が整った。
2001年3月末の有利子負債が8142億円と、債務免除ゼネコンの中では最大規模だっただけに、ゼネコン問題=フジタ問題とまで言われ、経営の危機度合いは昨年12月6日に東京地裁に民事再生法の適用を申請、経営破綻した青木建設以上に深刻とも見られていた。金融庁とそれに促されたメーンバンク、三井住友銀行<8318>の圧力を背景に、先に統合を決めた三井・住友建設にいわば割って入る形の「押しかけ女房」(田村宏明フジタ社長)的な強引な救済劇。
「さすが財閥系金融機関が肩入れしたゼネコンはつぶれない」(大手証券系アナリスト)と市場では急反発。発表当日に値上り率77.8%の32円にまで上昇するなど評価する向きも多い半面、金融支援も明確でない経営統合は不良再建を一カ所に固めた緊急避難に過ぎないとの見方も強い。
●ハリボテの3社連合
「債務免除は、今のところ頭の中にはない」。経営統合の発表の席上、田村社長はこう見栄をきってみせた。バブルの絶頂期、建設業界では「開発ならフジタ」とまで言われ、都市づくりを任せられる実力企業とされてきた。その開発部門を一手に引っ張ってきた男の最後の意地が一瞬、この発言に現れたようだった。
しかし、そのフジタの態度に「押しかけられた」側の三井建設は、「今後、よく詰めて検討していく」、住友建設側も「決定していることは現時点では不明」と対応は明らかに冷淡。そこには官邸の圧力に押された三井住友銀行の西川善文頭取が、ブッシュ米大統領来日を前に、まとめた救済策がいかに生煮えの状態だったかがよく現れている。
3社統合で誕生する新ゼネコンは、売上高で約1兆円と竹中工務店(約1兆3000億円)に次ぐ業界第6位。三井・住友というブランド力を考えれば、これまで5社だったスーパーゼネコン枠がひとつ増え、巨大ゼネコン誕生すると考えられなくもない。しかし、これはあくまでも売上高を重ねただけの話。連結経常利益(2001年3月期)は、3社合わせても200億円強。
しかも、有利子負債は売上高の約1.5倍にも膨れ上がるのだ。フジタがすでに本社を売却しているなど資産の切り売りによる返済原資確保にも限界があり、人員削減などいくらリストラに努めたとしても2度目の債権放棄がなければ、とても再建はおぼつかない見掛け倒しのハリボテ連合としかいえない。
●空中分解寸前?
そもそも、先に統合を決めた三井と住友の2社だけでも不協和音は絶えなかった。
債権放棄を済ませ不良資産の処理にメドをつけていた三井建設にして見れば、債権放棄なしの増資だけでお茶を濁している住友建設は、持参金なしの花嫁。
これに準大手ゼネコン中で最大の有利子負債を抱えるフジタが合流するのは、「あまりにも重い荷物を抱えることになる可能性がある」(三井建設関係者)。フジタは、統合前には不動産部門を分離、「販売用不動産の損失部分も大半が不動産部門」(田村宏明社長)と言うものの、不動産部門に「悪いもの集めるわけではない」(同)以上、本体にも不安要素は残る。しかも、連結子会社54社のうち8社が債務超過で、額は431億円にも達し、「そのいくつかが合流組みに入らざるを得ない」(関係者)なら、3社統合はいずれそれぞれに疑心暗鬼を呼び、前途は多難だ。
「3社連合は、とりあえず抜本処理の先延ばし」(ゼネコン業界関係者)で、銀行の体力回復後には再び次のシナリオが用意されていると見る向きも少なくなく、三井・住友建設へのフジタ合流は、ゼネコン再編劇のほんの一幕に過ぎなくなる可能性が高い。
○URL
・三井・住友建設誕生で追い込まれるゼネコン5社
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200202/05/20020205103014_77.shtml
・現実味増す「三井住友建設」の誕生
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200201/25/20020125120520_72.shtml
・ゼネコン再編加速、結局は3社統合へ〜三井・住友連合にフジタ加わる
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200202/15/20020215132006_03.shtml
[日向陽太郎 2002/02/19 11:25]