東京株式市場では、前場中盤から崩れ、日経平均は再び1万円大台を割り込んできた。市場関係者によると、これまで、G7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)、日米首脳会談をきっかけに、しっかりした政策対応がなされるとの見方の広がったことで株価は上昇してきたものの、会談の終了後に期待を裏切る要人発言が続いたことで早くも失望感が高まり、催促相場に転じてきた、という。
日米首脳会談と前後して、当局はマーケットが求めるようなデフレ対策の方向性を示唆するとの期待があったが、実際に、きょう経済閣僚からのメッセージは、それとはかけ離れたものと解釈され、株式市場では失望感から売り先行の展開になった。
具体的には、「現時点で公的資金注入の必要はない」(塩川財務相)、「不良債権処理策は、現段階で特別検査の公表以外に新しいものはない」(柳沢金融担当相)などの発言が失望感を誘ったと指摘されるが、中でも、竹中経済財政担当相の発言を最もマーケットが悪材料視した、という。
JPモルガン証券日本株式営業部バイスプレジデント、チャールズ・ランバート氏は、「これまで、不良債権の抜本的な処理を進めるために早期の公的資金注入を支持していたと市場で見られていた竹中経済財政担当相も、きょうは現時点では必要ないと発言したことが影響したようだ」と指摘。市場では、竹中担当相が講演等で、公的資金注入に対して前向きな発言をしていたと捉えられていただけに、きょうの発言によって、「政府は、実は何もやらないのでは、と市場で不信感が広がった」(準大手証券情報担当者)といった声も聞かれた。
この点について、東海東京証券の矢野正義市場情報室長は、「これまで、銀行への資本再注入が行われるとの期待が高まっただけに、それに反する発言が続けば、売られるのは当然と言える」と話す。また、みずほインベスターズ証券の内田基良参事役は、「小泉首相もブッシュ大統領の前で、あれだけ強く言ったのだから、以前に比べて実行してくれると期待できる。しかし、現時点では、姿勢は明らかであっても、具体的な部分がはっきりしない。銀行保有株の買取り機構にしても、思ったような機能は期待できなかったことで、今後出てくる対策についても、市場は不安視しているのではないか」という。
丸三証券の水野善四郎専務は、「日米首脳会談は程度の差こそあれ、市場関係者の多くが期待していた材料だった。それが裏切られ、今後の展望が見えないとなると、株価がどうなるか、答えは簡単だろう。当面は、復調が見えた米国株が、どこまで支え役になるか。気力で買ってきた相場だけに、マーケットが求める具体策が出ない限り、相場の立て直しは難しいのではないか」とコメントしていた。