不良債権処理の促進に向け、整理回収機構(RCC)が市場価格を上回る帳簿価格(簿価)で不良債権を買い取るべきかどうかについて「法改正してでも行うべき」と主張した自民党の山崎拓幹事長が18日、構想を事実上、断念した。政府内の反発が相次いだためで、過去にも検討された簿価での買い取りは、今回も実現が難しくなった。
簿価買い取りの議論は、山崎幹事長が16日、宇都宮市内の講演で「不良債権の処理をやって経済全体を救うことの方が大事。そのためにはRCCが簿価で買い上げられるようにすれば良い」と提案したことで本格化した。
だが、柳沢金融相は、18日の衆院予算委員会で、枝野幸男委員(民主)の質問に対し、「市場価格よりも高く国が買うということは、1種の隠れ補助金になる」と簿価での買い取りを否定した。竹中経財相や塩川財務相も「モラルハザード(倫理の欠如)を起こす可能性もある」などと否定的な見解を示した。
こうした声を受け、山崎幹事長は18日、「(政府が月内にまとめる)デフレ対策に入らなければ、やむを得ない」と発言した。
RCCは従来、市場価格を大きく下回る価格でしか不良債権を買い取れなかったが、昨年10月にまとまった政府の改革先行プログラムに基づいて金融再生法が改正され、入札に参加して市場価格で買い取れるようになった。だが、簿価で買い取った債権を回収、転売すると、市場価格との差額がRCCの損失となるため、「銀行の損をRCCに移す結果になる」と批判され、簿価での買い取り案が見送られた経緯がある。
(2月18日23:11)