18日の日米首脳会談で小泉純一郎首相はデフレ脱却に向けた決意を強調し、ブッシュ大統領も全面支持を表明したが、デフレ対策で米側から真っ先に回答を求められるのは不良債権の抜本処理だ。しかし、不良債権問題で最大の焦点となる公的資金投入をめぐっては政府内での意見が依然統一されておらず、年度末に向け小泉首相は難しい決断を迫られそうだ。米側は首相の指導力を注視している。
首脳会談で小泉首相は「不良債権処理を含めた総合的なデフレ対策を新たに取る」と説明、両首脳間で公的資金などで突っ込んだやりとりはなかった模様だ。しかし、米政府の関心がすでに不良債権問題に絞られているのは明らか。改革支持を表明したブッシュ大統領も、不良債権問題解決の決意を表明した日本側にとりあえずゲタを預け、処理策を注視する姿勢を示したといえる。
小泉首相は柳沢伯夫金融担当相に、金融庁が実施している特別検査の厳格化を指示。首相は、不良債権の抜本処理の結果、銀行が資本不足に陥り、金融システムが不安定化した場合の公的資金投入も視野に入れつつあるが、政府内で具体的な投入の道筋で合意しているわけではない。
公的資金の投入を判断する時期に関して、政府首脳は「特別検査の結果を見てからだ」と4月以降になる見通しを示したのに対し、竹中平蔵経済財政担当相は3月中にも投入を判断することがありうると示唆し、食い違いを見せている。
18日の衆院予算委員会で竹中経財相は「特別検査の結果に問題が生じれば、非常に早いアクションを取らなければならないが、年度内に投入が必要という発言はしていない」と微妙に軌道修正した。だが、「次の決算(3月期決算)で投入が必要な状況にあるとは聞いていない」と明言した柳沢金融相の慎重姿勢とは明らかに一線を画している。
特別検査の結果次第では、不良債権の抜本処理のための公的資金投入に期待を強めている市場の動向も勘案したうえで結論を出さなければならないが、閣内の足並みがそろっていない中で首相がどのような決断を下すのか。ブッシュ大統領は会談後、「小泉首相のリーダーシップに信頼を寄せている」と述べた。 【木村旬】
[毎日新聞2月18日] ( 2002-02-18-20:40 )