【ワシントン17日=早坂礼子】
日米のビジネスリーダーによる日米財界人会議の実質討議が十七日午後(日本時間十八日早朝)、ワシントン市内のホテルで始まった。初日の全体会合で米国側は、日本の景気回復の遅れにいらだちを隠さず、円安誘導は保護主義につながると強い懸念を示した。
全体会合の冒頭あいさつで米側議長のマイケル・アームストロングAT&T会長は、エンロンやKマートなど米大企業の破(は)綻(たん)を例に挙げ、「米政府も銀行も支援はしなかった。ダイエー救済に乗り出した日本とは対照的だ」と指摘。「ダイエー救済を金融市場は好意的にとらえず、日本は改革に後ろ向きだと受け止めた」と強調した。
さらに、日本の金融機関が抱える巨額の不良債権処理は「迅速に、大胆に行うことが重要」と主張し、「時間との戦いだ。公的資金の再投入を急ぐべきだ」と語った。
また、モルガン・スタンレーのロバート・スコット社長は、「市場は日本に対していらだっている。改革は言葉倒れだし、政策に新味がないとみている」と批判。最近の円安傾向に触れ、「自国通貨を安くすることは保護主義につながる」との認識を示し、「日本は米国頼みではなく、自ら景気回復に乗り出すべきだ」と述べた。
これに対し、日本側は槙原稔議長(三菱商事会長)が「日米双方の協力が重要」との川口順子外相のメッセージを紹介。経団連の今井敬会長(新日鉄会長)は、米独自の地球温暖化対策について「京都議定書の削減目標との間に大きな差がある」と指摘したものの、米側の厳しい見方に対しての反論はなかった。
日米財界人が意見交換する同会議は三十八回目。東京で十八日午前に予定されている日米首脳会談をにらみながら、懸案事項の解決策を探る。